国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

自然との共生(7) ─ 災害と義援金 ─

異文化を学ぶ

自然との共生(7) ─ 災害と義援金 ─

スマトラ沖地震で津波被害をあわれた方の中には、観光旅行の欧米人の方も多かった。遺族の中には、被災地に義援金を贈る人がいることも、報道されている。

翻って日本での災害の義援金を見ると、まず「遺族」に「公平」に分配することが、習慣的に行われている。災害復興の過程にはいろんな種類があるが、遺族に義援金を贈るというのは、弔慰金としての性格が強いといえる。

1886年イギリス船ノルマントン号が紀州沖で沈没。その際、イギリス人、ドイツ人は全員助かり、25人の日本人すべてが水死。イギリス船長は治外法権で当初無罪になった政治的大事件である。そのとき義援金が集められた。全国規模の義援金の嚆矢といわれる。当然、配布先は遺族しかなかったのである。

国立民族学博物館 出口正之

毎日新聞夕刊(2005年6月1日)に掲載