海と人(1) ─海上交易─
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海は人の生活の妨げにも助けにもなる。荒れた海は航海の障害となり、ときに人命を奪う。しかし、穏やかな海は人にその幸を手にする機会を与え、人や物の往来を容易にする。かつては海上を行く方が、一度に多くの人や物を遠くまで運ぶには都合が良かった。
南太平洋の島国バヌアツ。その一部の島々は遠い昔、はるか1000キロ以上も東に浮かぶトンガと、海上交易によって結びついていたという説がある。そのあかしであるかのように、土地の言葉で「小さなトンガ」を意味するトンガリキという名の島もある。
しかし、原動機も羅針盤もない時期に、人々はどうやって大海原を行き来したのだろうか。今秋、国立民族学博物館で開かれる「オセアニア大航海展」が、その秘密の一端を教えてくれるだろう。
国立民族学博物館 白川千尋
毎日新聞夕刊(2007年6月6日)に掲載