労働と宗教(5) ─日曜日は安息日!?─
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1986年、イタリアでマクドナルドの第1号店ができた時、各地でさまざまな反対運動が沸き起こった。これがスローフード運動誕生のきっかけになったことは有名だが、反対理由のひとつは、マクドナルド側が日曜日にも営業しようとしたことだった。
カトリック教徒にとって日曜日は安息日、労働を休んで神に祈りをささげる日である。現在、確かに日曜ミサの出席者は少なくなっているが、それでも日曜日になると、男も女も大人も子供もおしゃれをして、教会のある広場には出かけていき、社交を楽しんでいる。テレビやラジオでミサの中継を聞いている人も多い。イタリアでは日曜日から宗教的なニュアンスが消えてしまったわけではないのである。
しかし日曜日は、家族や親族が一緒に食事をする日でもある。結婚して家を出た子供も親元に集まってくる。ゆえに前日の土曜、女性たちは、日曜日に商店が休みになるせいもあり買い物に大忙しになるが、そうした不便さも皆が家族と過ごすためには仕方ないという。とするならば、日曜日に仕事を休むのは、むしろ家族だんらんのためだともいえる。
ところで当初、マクドナルドの各店は土曜か日曜を定休日にしていたが、今では定休日はほぼない。ひとつには主な顧客が観光客ゆえだが、そこで働く若者たちの労働観も変化しているのかもしれない。
国立民族学博物館 宇田川妙子
毎日新聞夕刊(2008年4月30日)に掲載