国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

グローバルとローカル(9) ─ クリスマス ─

異文化を学ぶ

イエス・キリストの誕生を祝うクリスマス。しかし、ツリーなどの習慣は、キリスト教が広まる過程でヨーロッパ各地の慣習を吸収して生まれてきたものであり、キリスト教とは直接関係はない。

なかでも面白いのは、サンタクロース。もともと、サンタは聖ニコラウスという聖人への信仰から出発しているが、現在のイメージに作り上げたのは、アメリカの「クリスマス商戦」だ。1931年12月、コカコーラはコカコーラ・カラーの赤と白の服を着せたサンタの広告を掲載した。赤鼻のトナカイも、同時期にある店のパンフレットにのった詩が起源である。クリスマスは、現代になっても、コマーシャリズムに乗ってさらに形を変えながら、世界を席巻し、キリスト教の信仰とはほぼかかわりのない日本にまで到達している。

国立民族学博物館 宇田川妙子

毎日新聞夕刊(2005年12月7日)に掲載