伝統芸能最前線(5) ─ 南インドの結婚式と音楽 ─
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音の社会的位置づけは時代とともに変化する。南インドのヒンドゥー教徒の結婚式では楽師たちが大音響で演奏する音楽が欠かせないと考えられてきた。
ナーガスワラムという管楽器を中心に太鼓とシンバルからなるアンサンブルは、儀礼の進行に即して音楽を演奏する。ナーガスワラムの音は「めでたさ」を増進するために結婚の船出には不可欠であるという説明がなされてきた。
しかし、CD文化の浸透はこの音楽の存在基盤を揺さぶっている。以前は生演奏がつきものだったほかの儀礼(婚約、安産祈願など)では、すでにCDで代用することが普通になっている。この楽器の「吉祥」のオーラは確実に薄らいでいるようだ。結婚式でも複製音楽で福を呼ぶのは近未来のことだろうか。
国立民族学博物館 寺田吉孝
ナーガスワラムという管楽器を中心に太鼓とシンバルからなるアンサンブルは、儀礼の進行に即して音楽を演奏する。ナーガスワラムの音は「めでたさ」を増進するために結婚の船出には不可欠であるという説明がなされてきた。
しかし、CD文化の浸透はこの音楽の存在基盤を揺さぶっている。以前は生演奏がつきものだったほかの儀礼(婚約、安産祈願など)では、すでにCDで代用することが普通になっている。この楽器の「吉祥」のオーラは確実に薄らいでいるようだ。結婚式でも複製音楽で福を呼ぶのは近未来のことだろうか。
国立民族学博物館 寺田吉孝
毎日新聞夕刊(2006年3月1日)に掲載