国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

おしゃれにきめる(4) ─ マレー人女性とベール ─

異文化を学ぶ


ある時、テレビを見ていると、シャンプーのCMにベールを被ったマレー人女優が出ていた。髪を洗う場面には別のモデルの髪を使っていたようで、何とも奇妙な印象を受けた。

マレーシアに住むマレー人女性の多くはイスラム教徒であるが、彼女たちがイスラムの戒律に従い、頭を覆うベールを身につけはじめたのは、イスラム復興が進む1980年代以降のことである。以来、公共の場では彼女たちの髪はあまり見られなくなった。

しかし、ベールで頭を覆っているからといって、女性たちはオシャレに鈍感なのではない。彼女たちはベールにきれいな模様の布を使って個性を表現し、唯一外に出ている顔には念入りに厚い化粧を施して、妖艶(ようえん)な美しさをアピールするのである。

国立民族学博物館 信田敏宏

毎日新聞夕刊(2006年8月23日)に掲載