国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

色(4) ─ 中国の「紅事」と「白事」 ─

異文化を学ぶ


中国では、「紅事」は幸せの結婚式を指し、「白事」は悲しい葬式を意味する。太陽神と火神の崇拝から太陽と火のもつ赤色の崇拝へと変わったのは漢族の「赤」への憧(あこが)れのルーツだと思う。赤は魔よけ、吉祥、生命力の色として信仰され、中国人が最も好む色だ。京劇の隈取(くまどり)にも、赤は忠誠を表す色として善玉に使い、白は険悪を意味する色として悪役に使う。社会主義政権樹立後、赤は革命の色として国旗などに使われている。

1980年以後、洋風の結婚式のグローバル化に伴い、「白」は純潔さを象徴する色として中国に受け入れられた。現在、「紅事」と呼ばれる結婚式には赤は依然として主役だが、「白」のウエディングドレスも結婚する2人の尊い愛情を象徴する色として登場している。

国立民族学博物館 韓 敏

毎日新聞夕刊(2006年10月25日)に掲載