色(9) ─ 赤い海 ─
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「白鳥は 悲しからずや 空の青 海の青にも 染まずただよう」と詠んだのは若山牧水であったか。この和歌に限らず、私たちには海は青いという強烈な思いがある。沖縄の海は別にしても、冬の北海道の暗く沈んだ海でさえ青い。
この夏、私はアムール川の河口に住む少数民族のニヴフの古老を訪ねた。そこへは、日本の中古の船外機を積んだ小舟しかいくすべはない。4人も乗ればいっぱいの小舟はアムールの河口を疾走する。
河口から海へとぬけるが、海と河との区別はつかず、小舟をほんろうする波は有馬温泉の金泉のように赤い。ここの海は青くないのだ。しかし、チョウザメもいればサケ、マスもいる。何よりこの海にはぐくまれた人と文化がある。そういえば寂しい村でひとりくらしていたあの古老はお元気だろうか。
国立民族学博物館 佐々木利和
この夏、私はアムール川の河口に住む少数民族のニヴフの古老を訪ねた。そこへは、日本の中古の船外機を積んだ小舟しかいくすべはない。4人も乗ればいっぱいの小舟はアムールの河口を疾走する。
河口から海へとぬけるが、海と河との区別はつかず、小舟をほんろうする波は有馬温泉の金泉のように赤い。ここの海は青くないのだ。しかし、チョウザメもいればサケ、マスもいる。何よりこの海にはぐくまれた人と文化がある。そういえば寂しい村でひとりくらしていたあの古老はお元気だろうか。
国立民族学博物館 佐々木利和
毎日新聞夕刊(2006年11月29日)に掲載