国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

成長と試練(2) ─ いい"気"になる武道修行 ─

異文化を学ぶ

硬くなった体と心を解放し、伸びやかに前へ、さわやかに上へ気を出す。いつしか寒かった道場は、いい気に包まれる。僕が合気道を始めて10年。伸びやかさ、さわやかさを味わうために道場通いを続けている。武道修行は成長と試練の連続。どんな状況でも、いい気を出し、それを周囲に伝えていくことは、人生修行にも通じる。

合気道の開祖・植芝盛平は、さまざまな経験を経た後、新しい和の武道を創始した。宗教家・出口王仁三郎との交流の中から彼が到達した境地は、「合気は愛気なり」の語に集約されている。彼は愛、すなわち伸びやかでさわやかな気を自在に操る達人だった。

さあ、いい気を求め、合気道、そして人生修行に励もう。いい気になるなよと注意されぬように!

国立民族学博物館 廣瀬浩二郎
毎日新聞夕刊(2007年2月14日)に掲載