ふつう博物館へは実物の資料をとおして未知の知識を得たり、既知の事柄を再確認するために出かける。
だから博物館の展示は、一定の主題にそって説明的に資料が配置され、知識の整理を手伝っている。題目や展開の仕方には、利用者にとっての分かりやすさが大切である。
しかし、博物館は新たな物事の創出や、発想の手がかりを提供する創造の場でもある。
一見、分かりにくい主題や展示手法も、その構成が理解できると新たな見方で見ることができ、異なったモノが見えてくる。
今春の特別展の2階部分は、このような意図から、茶の湯のものづくりに関わるテーマを動詞でまとめた展示を試みている。
そこで「叩く」というコーナーには、茶道具の水指にちなんだネパールからの銅の水容器のほかに、フィジーの樹皮布、トリニダード・トバゴのスティールドラムも選ばれている。ともに制作過程に「叩く」作業が入っているからである。
こうしてまったく異なった種類の資料が同じステージに展示されると、発想の広がりの無限性が透けてくる。
見方を変えると見えるモノも変わってくることが、博物館での展示では具体的に分かってきて、おもしろい。
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