1997年の暮れを私はミュンヘンで迎えた。民族学博物館2階のゲストルームは、ほぼ5メートル四方の広さで、簡単なキッチンとシャワー室、トイレ付きだった。
アルプス以北の11、12月は、毎日が陰鬱(いんうつ)な曇り空だ。しかし、私の面倒を見てくれたチベット文化研究者のR氏は、「クリスマスが過ぎたら晴れるさ」と、慰めてくれた。
確かに、その通りになった。そして、私は、キリスト生誕の日が年越しの日にセットされたわけを理解した。久しぶりに姿を現した太陽のまばゆさに、人びとは、春の訪れを実感したのだ。クリスマス市に並ぶ黄金色の麦わら細工の飾り物は、太陽そのものだ。
クリスマスツリーは、日本の門松にあたる。また、サンタクロースは、ナマハゲと同じく来訪神なのだ。日本には、よい子に贈り物をもたらす「良いサンタ」しか紹介されていないが、本当は、悪い子をこらしめる「悪いサンタ」とペアでやって来るのだ。
12月半ば、R氏は、夫人の郷里に向かった。他の館員たちも、相次ぎクリスマス休暇に入り、博物館も休館に。私は、宿直の守衛と2人で留守番をすることになった。
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