数年前の秋口、新生殖補助技術に関する調査で、出生率が増加傾向にあるフランスを訪れた。午後のカフェで、知人と娘さんと3人で「家族」に関しあれこれ話 していた。知人は、長らくパリで暮らしてきてもやはり驚きを感じることとして、高齢の親への子どもたちの接し方を挙げた。
親たちの近隣に暮らし、頻繁に会いに行く場合でも、必ずしも夕食を届けたりはしない。親がヘルパーに買い物を頼んで調理してもらったり、時には自分も料理を作ったりすることを尊重しているという。親たちがその日の気分で食べたいものを決めるという楽しみを、無理なく持ち続けることが重視されている。
だから、親たちを残してバカンスに出かけても、責められることはない。日常とは違う土地で、太陽のもとで、ゆっくり過ごすことによって次のシーズンへの活力を蓄える。それは、親子それぞれにとっても大切だとみなされている。
最近、親を介護する子どもたちの「小休止」の必要性が注目されている。誰もが楽しみや「毛づくろい」のひと時を確保できるようなライフデザインが、高齢化する共生社会構想の一要素かもしれない。
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