旅・いろいろ地球人
美味望郷
- (2)トルティーリャ 2012年9月13日刊行
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八杉佳穂(国立民族学博物館教授)
トルティーリャを焼く女性たち=筆者撮影メキシコ、グアテマラに通い詰めて、はやいもので40年になろうとしている。
若い時の思い出といえば、食べ物よりも下痢である。最近はペットボトルなどで容易に水を飲むことができ、料理にも浄水が使われるようになって、ほとんど下痢をすることがなくなった。だが、当時はまだ衛生状態がよくなく、安いものを食べていたためか、よく下痢をした。
そんな苦い思い出があるためか、あまり食べたいものは思い浮かばないのだが、主食のトルティーリャだけは、時折食べたくなる。最近は日本でも簡単に手に入るようになったけれど、小麦粉を使ったものばかりである。やはりトルティーリャは、トウモロコシで作ったものでなければならない。
小麦粉のトルティーリャは、何となく上品ぽくて頼りなく、本場の味にはほど遠いが、それでも食べたくなる。そんなときは、アボガドをつぶして、みじん切りにしたタマネギやトマトなどを入れ、ライムをかけて混ぜ合わせた「ワカモーレ」を用意する。それをクレープ状のトルティーリャにつけて食べる。簡単にできて、美味である。それに野菜たっぷりの鶏肉のスープに香菜が乗っておれば、しばし満足である。
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