国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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よそ者?

(5)記録禁止というマナー  2013年11月14日刊行
伊藤敦規(国立民族学博物館助教)

米アリゾナ州、ホピ保留地ムンカピ村落の看板=マール・ナモキさん撮影

米国先住民の多くは保留地に暮らしている。保留地の境界や村落の入り口などには「来訪者に告ぐ」と書かれた大きな看板が立っていることがある。よそ者が保留地内や村落内で守るべきマナーが記されているのだ。

アリゾナ州北東部のホピ保留地にはいわゆる観光施設はない。それでも伝統的な儀礼が人々をひき付けてきた。都市から遠く離れた「秘境」での「原始的」な宗教実践は、国家としての歴史が浅い米国の市民や人類学者にとって興味深い催事に映る。

それだけに、「記録行為の一切を禁ずる」というよそ者に求められるルールを無視して記録をしたくなる気持ちも分からないわけではない。

看板に記されたルールを無視し、儀礼の様子を写真に撮影したり、メモをしたりするよそ者が地元の人から注意を受けているのをしばしば目にしてきた。それでもやめない場合は、機材没収や自治警察による強制退去、そして訴訟に発展することもあるそうだ。

ホピにとっての儀礼とは、世界観や生業と密接に結びついた祈りの場なのである。そこでの様子は写真や文字で記録するのではなく、脳裏に記憶しておくものだという。そのルールさえ守れば、よそ者であっても祈りを共にささげる者として儀礼の見学が歓迎されることもある。

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