旅・いろいろ地球人
組織
- (8)プロジェクト終の棲家 2014年11月13日刊行
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鈴木七美(国立民族学博物館教授)
ドイツ、ハイデルベルク市役所で、高齢者が住みやすい町構想として案内されたのは、カタログにも掲載されている多世代共生をテーマに住居施設を創るプロジェクトだ。望む場所に住むこと「エイジング・イン・プレイス」や「終(つい)の棲家(すみか)」は、高齢社会のニーズとしてここでも注目されている。担当者は、長年、看護師やソーシャルワーカーとして働き、高齢者の希望を実現する調整的ポストが必要だと提案して、市職員として雇用されたという。
現地を訪ねると、それは、路面電車で町の中心部からほど近い住宅街に建てられたモダンな4階建ての集合住宅である。10年近く、利便性、経済性、共有性について議論を重ねてきたというプロジェクトメンバー(=住人)の「作品」だ。住居には、共有の場が鏤(ちりば)められている。子どもたちが登って遊べる壁を設けた中庭、大はしゃぎできる子ども部屋、裁縫や工房部屋、洗濯と乾燥室などが設けられた地下室は人々が行き交う。天井の高い多目的室は、有料で住居外の人々も使用できる。外廊下の小さなスペースは、晴れた日に、食事やお茶を一緒にしたり、花を育てる場として活用されている。
暮らしの場を創るプロジェクトは、人々の願いを込めて織り上げる様々な組織を繋(つな)げる進行形の協働作業なのだ。
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