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信じる
- (7)アカ狩りにあった教会 2015年3月5日刊行
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太田心平(国立民族学博物館准教授)
天を仰ぐ右手(左)と闘争する右手(右)=韓国ソウルで2002年5月、筆者撮影宗教団体なのか、政治団体なのか、はっきりしない団体は数知れない。韓国のキリスト教会も例外ではない。
2000年前後、私はソウルの工業団地にあるプロテスタント教会で、現地調査をしていた。信徒が50名前後と小規模ながら、韓国史では名のとおる教会だ。
創設は1958年。やがて、経済発展のかげで酷使されがちな労働者の現世救済を目指す宣教団体となった。牧師らは、福音を説きながらも、工員たちに労使関係や資本主義の問題点を教え、当事者リーダーに労組を組織させた。民主化運動が激化した80年代には、多くの学生運動家が参加して、団体は巨大化。これに対して政府やマスコミは、「アカ(共産主義者)の教会」と名指しで非難、弾圧した。
90年代の後半、民主化運動が一段落し、労組も自立したあと、この教会はゆれはじめた。牧師たちは、宗教団体にもどろうとしていたが、信徒たちにはそれに納得しない。「私たちが揚げる右手は、こうじゃない!」と、天を仰ぐポーズをしたと思えば、「本当は、こう!」と、こぶしをにぎる信徒たち。闘争のポーズだ。彼/彼女らが信じるべきはイエスだけでなく、マルクスでもあるというのである。
信念というものは、宗教か政治かと割り切れるほど、単純ではないのだ。
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