旅・いろいろ地球人
ミュージアム
- (2)アラブの美徳 2015年7月16日刊行
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西尾哲夫(国立民族学博物館教授)
カフェのミントティーが絶品のアラブ世界研究所=2012年5月、筆者撮影セーヌ河畔に建つ白銀の殿堂アラブ世界研究所。近くで眺めると、自動で採光を調節する丸窓が端正なアラベスク文様を描き出しているのがわかる。パリに来るときは必ずここに足を運んできた。
数年前、同研究所でアラビアンナイト展が開催され、国立民族学博物館からも貴重なコレクションを貸し出した。同展では、世界に散在する門外不出の写本が一堂に会することになる。シカゴの博物館からは、世界最古のアラビアンナイト断片が出展された。
ところがそのころ、私は極度のストレスから身体機能の一部を失っており、見学に行きたくても海外どころではなくなっていた。これを知った研究所のアラブ人スタッフが、研究所にはたらきかけてくれた。そして通常は撮影できない写本も含め、すべての展示物を映像化する許可をとりつけてくれたのだ。このおかげで私は、現場にいるかのように展示を楽しむことができた。そしてそれ以上に彼らのホスピタリティーに感動した。
ミュージアムはモノを展示するだけの場所ではない。それらのモノには人がかかわっており、その人たちの思いがつまっている。アラブ世界研究所のスタッフは、アラブ文化の最大の美徳であるカラーム(寛大さ)を体現してくれたのだ。
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