国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

韓国の食

(4)ハングル  2015年10月22日刊行
朝倉敏夫(国立民族学博物館教授)

かたいものの代表はスルメ

私が初めて韓国に行ったのは、1979年である。フィールドワークをするために韓国語を習いに行った。初めは街の看板のなかでハングル酔いをしたが、1ヶ月もするとバスの車窓から看板のハングルを読めるようになった。

韓国語の勉強では、ハングルを理解することが第一歩だが、次はそれを正確に発音することである。

韓国語には、濃音と激音がある。たとえば、カの音でも、北海道というとき、前に促音の「ッ」がついた感じで発音するのが濃音で、喉の奥から息を激しく出してだす「カ」が激音である。濃音を正しく発音するには口の筋肉が必要である。口の筋肉を鍛えるには、かたいものを食べなければならない。また、焼酎を一気に飲んだ後、思わず出す「カァーッ」の音が激音である。

韓国のかたいものを食べ、焼酎をたくさん飲んだおかげか、私は6ヶ月で韓国語の発音をマスターすることができた。

それから三十数年、私はたびたび韓国に通っているが、行って2・3日は正確な発音ができない。かたいものを食べ、焼酎を飲むと、なんとか韓国語が上手に出てくる。食は身体とむすびついているのを実感する。

現在、国立民族学博物館で開催中の特別展「韓日食博」では、食文化を通してハングルへの興味ももってもらいたい。

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