国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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韓国の食

(5)キムチとキムウチ  2015年10月29日刊行
朝倉敏夫(国立民族学博物館教授)

画面左中央と下に「キムウチ」と表示されている=特別展「韓日食博」から

11月を迎えると韓国では越冬用のキムチを大量に漬けるキムジャンの季節となる。2013年に、日本の和食とともにユネスコ無形文化遺産となったキムジャン文化は、アパート人口の増加とキムチ冷蔵庫の普及にともなって、かつてのように家族・親族や隣近所が集まっての祝祭ではなくなり、「分かち合い」の精神が薄れてきている。

しかし、それでもキムチに対する韓国人の思いは強い。母の味であり、民族の食であるキムチを世界に発信している。国立民族学博物館で開催中の特別展「韓日食博」では、韓国国立民俗博物館(ソウル)から借用したキムチを紹介する映像を流している。そこに日本語表記の間違いを一つ発見した。キムチと書くべきところがキムウチになっていたのだ。

私は1990年代の終わり起きた「日韓キムチ論争」を思い出した。自然発酵をしていない日本のキムチはキムチではないという主張が韓国から出されたのだ。その時に使われたのが、アルファベット表記の違いである。韓国のキムチはKimchiであるが、日本のキムチはKimuchiと表記される。これを韓国人が読むと、Kimはキムで、残りのuchiがウチとなる。もちろん意図的なものではなく、ケアレスミスであるが、キムウチと読むのもむべなるかなである。

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