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音楽の名手たち
- (4)在日のパンソリ 2017年11月30日刊行
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寺田吉孝(国立民族学博物館教授)
タルマジで公演する安聖民(左)=韓国伝統茶房タルマジで2015年6月、筆者撮影大阪生野区にある韓国伝統茶房タルマジで、毎年数回パンソリの公演が行われている。パンソリは、朝鮮半島で生まれた語り物のジャンル。太鼓の伴奏で、歌い手が節をつけて物語を聴かせる。
演じるのは在日コリアン3世の安聖民(アンソンミン)。たまたま聴いたカセットに入っていたパンソリに魂を奪われ、一念発起して仕事を辞めて韓国に留学した。
母語ではない言語の語り物を習得するには気が遠くなるほどの忍耐力がいる。留学前から勉強していったが、韓国では発音の違いに苦しめられた。
それでも、留学中に師匠との運命的な出会いがあり、長年の修練を重ねて、昨年には韓国政府からパンソリ伝承者の称号を得るところまできた。
朝鮮語が理解できなくても楽しめるように、安聖民は日本語字幕をつけた公演を行っている。ときおり大阪弁を混ぜ込んで笑いを誘うタイミングも絶妙だ。
タルマジの主人はいう。韓国で生まれ育った人間にも難しい語り物を、在日が学び演じることができるようになったことは、言葉を奪われ、歴史を奪われた在日の歴史を克服して行くような過程にみえると。
安聖民のパンソリを聴いて涙する人が多いは、このような背景があるからに違いない。
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