旅・いろいろ地球人
エジプト映画の今
- (3)誠のニッポン人 2018年8月25日刊行
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相島葉月(国立民族学博物館准教授)
劇中に登場するナイル川=エジプト・カイロで、2015年11月、筆者撮影
エジプト映画「誠のニッポン人(原題:ヤバーニー・アスリー)」は、エジプト映画の王道の、笑いあり、涙ありのコメディである。2017年に本国で劇場公開された。
カイロの下町に暮らすマーヘルは、在エジプト日本大使館の日本語教室で出会ったサクラとめでたく結婚。双子の男の子に恵まれたものの、下町の暮らしになじめない日本人妻は子供を連れて帰国してしまう。子供に会いたいマーヘルは日本大使館を介してサクラと交渉し、半年だけという条件で息子たちはカイロに戻ってきた。
本作は随所でエジプト人が日本人に抱くステレオタイプな姿が見受けられる。しかし日本人は勤勉で科学に強いと言ったイメージは、エジプト人の自国民に対する批判的な眼差しの逆照射なのである。例えば19世紀以降、エジプトの社会問題といえば学校教育だ。私立校の学費を払えないマーヘルが公立小学校に息子を送ったことで、当初は「日本的」であった少年たちが「エジプト化」し、ベリーダンスを踊ったり、シンナーを吸ったりし始める。日本で育った子供の優秀さを称賛しつつ、エジプトの公立校を批判しているのである。
問題だらけのエジプトと真逆の日本。最後に子供たちが選ぶのはどちら?ぜひ見てほしい。
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