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工芸継承
- (1)商工省工芸指導所 2018年9月8日刊行
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日高真吾(国立民族学博物館准教授)
豊口克平がデザインしたスポークチェア=国立民族学博物館所蔵
商工省工芸指導所は、日本における工芸の近代化、産業化の推進と東北地方の工芸業界の発展を推進することを目的に、日本で初めての国立の研究・指導機関として、1928(昭和3)年に仙台市に設立された。その後、39年には大阪に関西支所が開設されている。世界的な建築家であるブルーノ・タウトやシャルロット・ぺリアンを招へいしたり、日本のインダストリアル(工業)デザインの礎を築いた剣持勇、豊口克平らを輩出したりするなど、69年の改組でなくなるまで日本の工芸界、デザイン界をリードする役割を担ってきた。
国立民族学博物館では、この工芸指導所の活動を概観し、日本のインダストリアルデザインの原点と現在を考えることを趣旨として、今月13日から11月27日にかけて特別展「工芸継承―東北発、日本インダストリアルデザインの原点と現在」を開催する。工芸指導所がより良いデザインや機能性を追求して制作した多くの試作品を展示する。また、現代の産業技術にも大きな影響を与えている、さまざま技術も紹介する。
工芸とインダストリアルデザイン。一見、あまり関係がないように思われがちな両者が、日本では密接にかかわりながら発展してきた様子をみていただきたい。
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