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世界をめぐる楽器
- (1)インドの楽器と分類 2019年4月6日刊行
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福岡正太(国立民族学博物館准教授)
サンディップ・タゴール氏の祖父が愛用していたシタール=国立民族学博物館所蔵
楽器の分類法として、管・弦・打楽器の3分類法がよく知られている。これはオーケストラなどに使われる楽器の歴史や音楽的役割を踏まえた分類として便利だ。しかし、これで世界の楽器を分類しようとすると不都合が生じる。たとえば、弦を打って鳴らす楽器は弦楽器にも打楽器にも分類できる。
これに対して、楽器研究でよく使われるのが、体鳴・膜鳴・弦鳴・気鳴楽器の4分類法だ。音を発する媒体に着目した分類で、それぞれ、固体(楽器自体)、膜、弦、管の中の気柱が振動して音を出す楽器を指す。後に、電気的に音を発生させる電鳴楽器が加えられた。
1876年、インドの音楽学者S・M・タゴールは約100点のインドの楽器と音楽書をブリュッセルの楽器博物館に寄贈した。それがこの4分類法考案につながり、ヨーロッパにおける楽器研究を大きく進展させた。
彼は日本にも3点の楽器を寄贈し、それらは現在東京国立博物館に所蔵されている。また、同じタゴール家の血筋で、日本でインド文化の普及に尽くしてきたサンディップ・タゴール氏が所蔵していた楽器が、3年前国立民族学博物館に譲られた。それらの貴重な楽器の一部が、5月7日まで国立民族学博物館で展示されている。
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