国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

サントメ砂糖紀行

(2)燃える水の味  2019年11月9日刊行

鈴木英明(国立民族学博物館助教)


アグアルデンテの瓶。それぞれの店に独自のレシピがある=サントメ島で2019年1月、筆者撮影

西アフリカ・サントメ島到着の翌朝、街の中心部に向けて歩き出した。海岸沿いにしばらく歩いていくと、ポルトガルで見るようなパステルカラーのすてきな建物群が見えてくる。一番立派な建物は大統領府、それと教会を横目に小さな運河を渡ると中心市街に入る。街の造りが常設市場を中核としていることはすぐわかる。

よく考えれば、その日は日曜日だった。閑散とした常設市場。キリスト教徒が圧倒的多数のこの島だ。それほど広くない中心市街をぐるぐる歩いていると、大きな木陰のある場所に人が集っているのを見つけた。物売りが仮設店舗を構えている。

そんな店舗のいくつかが瓶を並べていた。ただの水な訳がない。聞けば、アグアルデンテだという。ポルトガル語を直訳すれば「燃える水」。平たく言えば蒸留酒。「何でできているの」と聞くと、砂糖だという。ああ、砂糖との出合いはここからかと思い、瓶を改めてみてみる。いろいろなものが瓶に詰められている。ライムだったり、シナモンだったり。実はこれ、多くの砂糖生産地で見られる飲み方だ。当初の蒸留方法が良くなかったのか、たとえば、モーリシャス島でもこうした飲み方が伝統的なものとして知られている。

アグアルデンテの味?僕はライム漬けを頼んだ。さっぱりと飲みやすいが、喉は燃えたように熱かった。

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