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沖縄の年中行事と歌

(3)海人と糸満ハーレー  2021年2月20日刊行

岡田恵美(国立民族学博物館准教授)


3地区がしのぎを削る沖縄の糸満ハーレー=2015年6月、筆者撮影

沖縄県内の海沿いの地域で主に旧暦5月に開催される年中行事が、爬竜船競漕である。中でも沖縄本島南西部の糸満漁港で、旧暦5月4日に行われる「糸満ハーレー」には多数の観光客も訪れ、賑わいを見せる。

海人(漁師)の多い漁港周辺の西村・中村・新島の3地区が競い合う。その起源は15世紀ごろに同地域の城主であった汪応祖(おうおうそ)が、明への留学時に見た爬竜船競漕を模して開始したなど諸説ある。競争原理に基づく行事ではあるが、現在も海人にとっては、航海安全と豊漁祈願の祭祀行事の一面を持つ。

爬竜船は8メートルのサバニ(木造漁船)に各地区の模様が施されている。地域の中学生や職域集団が参加可能な種目もあるが、最も重要なのは、漁協青年部に所属する現役の海人のみで行われる「御願(うがん)バーレー」である。当日の朝、漁港近くのサンティンモーの丘で祝女(ノロ)と3地区の代表が御願を行い、丘の上からの旗の合図で、850メートルの距離を3地区の海人がサバニで競漕する。

沖縄の伝統行事の中には、観光・地域振興策による大規模なイベントと化す過程で、参加者や観光客の利便性から週末開催に移行する行事もある。だが、この糸満ハーレーは本来の海人の祭祀・祈願を何よりも大切にし、旧暦5月4日開催の伝統が誇りを持って海人に継承されている。

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