国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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踊る

(6)女たちの夜更かし  2015年6月18日刊行
松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)

ホールを借りて夜通し踊る=マハーラーシュトラ州で2013年8月、筆者撮影

インド映画を見たことがおありだろうか。歌と踊りが満載のインド映画を見ると、インド人はよほど踊りが好きなのかと思ってしまうが、実際には結婚式でも、映画のような踊りに遭遇することはまれである。

私が調査をしているマハーラーシュトラ州の儀礼や祭礼は、全般的にどちらかというと簡素で、豪華絢爛(けんらん)とは程遠いからだろうか。特に女性が、人前で踊る機会というのは、良家の子女の習い事として人気のバラタナーティヤムという舞踏か、ナヴァラートリというお祭りで、未婚の男女が輪になって棒を打ち鳴らすダンディヤという踊りくらいである。祭りでも、女性たちは遠巻きに眺め、恥ずかしがって踊ることはしない。

それが、女性だけの空間になると、様子は一変する。とくに、結婚後5年以内の女性が行うマンガラガウリという儀礼では、集まった親せきや友人、近所の女性たちが、夜通し歌い、踊り、遊ぶ。年齢に関係なく、老いも若きも掛け合い歌を歌いながら、みんなで輪になって踊る姿は、普段の反動かと思うくらい楽しげである。そして、それがなかなか終わらない。

夜が弱い私は、今度こそはと思いながら、いつも途中で脱落し、寝てしまう。インド女性の隠れたバイタリティーに感心しきりである。

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