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みんぱく世界の旅

東南アジアの仏教(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年9月3日刊行
平井京之介(国立民族学博物館教授)
僧になる理由はさまざま

車に乗って行列をつくり得度式に向かう若者

東南アジアの仏教では、僧になるのに特別な条件はありません。20歳以上の男性で、健康で罪をおかしておらず、両親から許しをえていれば、儀礼によって、だれでも僧になることができます。

私も僧を経験してみました

10年ほど前ですが、私も特別な準備をすることなく、ラオスのお寺で僧になりました。その頃、僧になった理由をみんなに尋ねてみました。一番多かったのは、一人前の男性になるため、という理由でした。僧になると、礼儀作法や責任感を身につけることができ、まわりから一人前の大人としてみられます。結婚前の花むこ修行として僧になる青年が多いのです。
親孝行も多い理由でした。息子が僧になると、両親、特に母親が幸運に恵まれると信じられています。親が亡くなったときは、死後の世界で幸せになれるように、息子が一時的に僧になることがよくあります。
教育のためという、ちょっと変わった理由もありました。僧や見習い僧になれば、食べ物には困らないし、学校に通わせてもらえます。地方の貧しい家庭の子どもが勉強を続けるためになるのでした。
僧をやめるのも簡単です。特別な理由はいりません。お寺にいるのにあきたから、結婚したいから、好きなものを食べたいから、といった理由で、やめる人が多くいます。

私が僧になったのは3か月ほどでした。東南アジアの仏教では、雨が続く季節である7月~10月の3か月間を雨安居といい、すべての僧がお寺にこもって修行に専念します。この時期に僧になることが特別に奨励されています。

 

一口メモ

僧や見習い僧になる儀礼を得度式といいます。親戚が行列をつくって踊りながら街をねり歩き、お寺で盛大なお祝いをします。

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