みんぱく世界の旅
- エチオピア(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2016年12月24日刊行
-
川瀬慈(国立民族学博物館助教)
聖職者を目指す子どもたち
コロタマリたちエチオピアの代表的な宗教のひとつに、キリスト教エチオピア正教会があります。その起源は4世紀にまでさかのぼり、人々の生活の中できわめて大きな位置を占めてきました。そのような中、人々にエチオピア正教会の教えを伝え聞かせる聖職者は地域社会の中で尊敬される存在です。
コロタマリの住居正教会の儀式や行事を行う聖職者にはさまざまな階級や役割があります。聖職者を目指す子どもたちは「コロタマリ」と呼ばれ、朝は家々の軒先で人々にお祈りをささげて、その見返りに人々の食べ残したインジェラ(エチオピアの主食で、テフという穀物などからできた薄いパン)や豆類、衣服、あるいはごくわずかな金銭を受け取ります。午後は、所属する教会の横にある小屋のまわりで聖書を読み、聖書の中のさまざまなお話について暗唱します。先輩たちから出された試験を少しずつクリアし、聖職者への階段を一歩一歩、上っていかねばなりません。
古代の言葉であいさつ
コロタマリが聖書を学んでいます家々の前でお祈りをささげるときは、全身をコットン製の布のマントか毛布で包み、牛皮でできたポシェットに旧約聖書を入れます。野良犬を追い払うための木のつえも忘れてはいけません。同じコロタマリと路上ですれ違う時はあいさつをします。「ウヘヨ、フォアルカ?(兄弟よ、元気か?)」「イグザベリ・セッバ(神のおかげで元気さ)」
エチオピアの公用語アムハラ語のルーツといわれ、聖書の中や儀礼の場に用いられる古代の言葉であるゲエズ語を用い、コロタマリ同士、互いの連帯を確認し合います。
一口メモ
エチオピアの正教会には「ツォム」という精進期間があり、信者は肉や牛乳など動物性のたんぱく質を避けます。通常は水、金曜日です。
シリーズの他のコラムを読む