旅・いろいろ地球人
キルトのある暮らし
- (2)キルティング・ビー 2018年1月11日刊行
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鈴木七美(国立民族学博物館教授)
募金用キルトを製作する学生とボランティア=米インディアナ州で2009年11月、筆者撮影
長年、キルト作りは賑やかだという印象をもっていた。行く先々で表布、中綿、裏布を縫い合わせて作品を共に仕上げる場に遭遇したからである。こうした集まりは、「キルティング・ビー」「キルト・ビー」と呼ばれてきた。働き者のハチのように会話しながら作業するからとも説明される。
キリスト教再洗礼派のアーミッシュたちは、信教に基づいて無地の服を着用し、その端切れを生かした鮮やかな色合いとデザインのキルトで知られている。簡素であることを旨とするが、結婚、誕生、成長祝い、送別など人生の節目に贈られるキルトには、皆で名前や年月を刺繍することもある。こうしたビーでは、たっぷりの食事を女性たちが共に食べ会話を満喫する。
米国でキルティング・ビーはさまざまな形で行われている。例えば大学と隣接した教会の募金用キルト作りには美味しいスープとパンを楽しみに男子学生も参加して多世代のつきあいが広がる。キルト製作と研究に携わってきた70代女性も自宅で定期的にビーを開くという。若い頃にノルウェーから移民した彼女は、人々が影響しあい創られてきたアメリカンキルトの世界を追っている。彼女のビーは各々自分のキルト製作を進める気楽なものだが、持ち寄りの料理を分け合うポットラックと知り合いの輪が広がる楽しみは変わらない。
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