旅・いろいろ地球人
遠くて近い村
- (2)送金システム 2018年12月8日刊行
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三島禎子(国立民族学博物館准教授)
国立民族学博物館に展示されているアフリカ各地の民族衣装=大阪府吹田市で2015年、筆者撮影
移民が家族に送金したり、旅先で資金のやり繰りをしたりするとき、世界一速い決済方法がある。
ソニンケの人びとは、セネガルやマリ、モーリタニアの首都から陸路で数百キロ離れた内陸に故地がある。途中から舗装道路もない。銀行や郵便局は村から遠く、そこは都市機能というものがほとんどない場所である。
それにも関わらず、送金はまたたく間に行われる。故国にいる家族に現金が必要な場合、近くに住む知人が用立てする。両者の貸し借りは、海外にいる双方の家族が決済するのである。電話一本で済む。
旅先で、商品の買い付けに資金が必要な場合も、同じような信用貸しがおこなわれる。こちらは家族や知人という関係を越えて、商売上の契約といってもよい。
携帯電話を利用した送金も一般的になってきた。個人間の金銭のやり取りを電子化したこの方法は、銀行がないところで盛んにおこなわれている。
それでも現金を携えて移動しなければならないこともある。とくに移民が帰郷する際は、多くの知人からそれぞれの家族へ渡す現金を預かる。かれらは札束を巻き付けた腹をゆったりした貫頭衣で覆い、さりげなく税関の前を通って飛行機に向かう。
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