国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

中南米博物館紀行

(1)プエルトリコ  2019年5月11日刊行

鈴木紀(国立民族学博物館教授)


先住民族・黒人・白人の文化の融合を示すアメリカス博物館の展示場=サンファンで2019年2月、筆者撮影

この5年ほどの間に、中南米の先住民族文化を展示する博物館を100以上訪問した。ジャンルは考古学、歴史学、人類学、アートなど多様だ。博物館を手がかりに、中南米とはどのような地域か考えてみたい。

中南米は歴史的な概念だ。南北アメリカ大陸の中で、メキシコとカリブ海以南を中南米と呼ぶ。それは16世紀以降、この地域に主にスペイン語やポルトガル語を話す人々が移住したためである。

それでは中南米の玄関はどこだろうか。スペインによる初期の植民活動の拠点となったカリブ海の大アンティル諸島地方がそれにあたると私は考えている。アメリカ合衆国の自治連邦区のプエルトリコもそこに位置する島の一つである。

アメリカス博物館はプエルトリコの首都サンファンにある。この博物館の特色は、その名前にある。アメリカを複数形にして名乗り、アメリカ大陸に多様な文化があることを示している。なるほど、この博物館では中南米各地の民衆芸術の展示が楽しめる。アフリカの遺産を強調していることももう一つの特色だ。アフリカの文化や奴隷貿易の歴史が紹介されている。

アメリカス博物館を見学すると、中南米という大きな屋敷の玄関から、いくつもの部屋を見渡しているような感覚にとらわれる。

シリーズの他のコラムを読む
(1)プエルトリコ
(2)ウシュアイア
(3)ティワナク
(4)パナマ