国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2020年9月12日(土)
判決、ふたつの希望

チラシダウンロード[PDF:574KB]

  • 日 時:2020年9月12日(土)
    13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 参加費:無料/要展示観覧券(一般 580円)
  • 定 員:112名
    事前予約の方は入場整理券を11:00から本館2階講堂前にて配付します。
  • 主 催:国立民族学博物館

※ 定員に達しましたので、申込受付を終了しました。

 

● みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>
第48回上映会

判決、ふたつの希望  / L'insulte
2017年/レバノン・フランス/113分/アラビア語/日本語字幕付き
【開催日】2020年9月12日(土)13:30~16:30(開場13:00)
【監督】ジアド・ドゥエイリ
【出演】アデル・カラム カメル・エル=バシャ
【司会・解説】菅瀬晶子(国立民族学博物館准教授)
「映画解説」

1990年の内戦終結後も、いまだ根深い遺恨がくすぶり続けるレバノンの首都ベイルートを舞台に、キリスト教徒のレバノン人とイスラーム教徒のパレスチナ人との個人的な諍いが、やがて国家全土も巻き込む大論争へと膨らむ顛末を描く人間ドラマ。難民キャンプで暮らし、不法就労ながら建設業の現場監督として信頼を得るヤーセルは、作業中にトラブルとなったトニーが営む工場に謝罪に赴くが、パレスチナ人への憎悪むき出しの侮蔑の言葉に耐えかね、殴り倒し重傷を負わせてしまう。トニーの告訴を経て、原告と被告両陣営の思惑や複雑な要素が入り混じる厄介な裁判が進展するうちに、周辺諸国も絡むレバノンの暴力と報復の歴史や、意固地が災いし負の連鎖に陥る当事者二人の悲痛な記憶までもが、次第にあぶり出されていく。ベイルート出身で法律一家に育ち、映画制作を学んだ米国ではクエンティン・タランティーノ監督作品にも参加したジアド・ドゥエイリ監督は、実体験を基に、リアリティ溢れる社会性とエンターテインメント性とを併せもつ法廷劇へと昇華。政治や宗教を超えたところに、ひとの相互理解が成立し得ることを力強く謳う、レバノン初のアカデミー賞外国語映画賞候補となるなど世界を席巻した話題作だ。(映画評論家 服部香穂里)

正義なき、しかし情ある世界の片隅で

レバノンは今、映画ファンからちょっとした注目を浴びている国である。昨年公開された『存在のない子供たち』と『セメントの記憶』は、ともに国家から顧みられず、大都会ベイルートの繁栄の犠牲となったシリア難民たちの姿を、情け容赦なくカメラにおさめた秀作である。しかしながら、難民の待遇をめぐる問題はシリア紛争(2011年~)以前からずっとこの国でくすぶり、対立の火種となってきた。1948年以降この国に大量に逃れてきたパレスチナ難民は、レバノン市民権を得られず無国籍のまま、差別を受ける存在である。1975年から15年間続いたレバノン内戦は、まさにこの数年前、ヨルダンを追われてきたパレスチナ解放機構と、マロン派キリスト教徒を中心とする極右政党カターイブ(本作の主人公のひとりトニーが支持する、レバノン軍団の母体)の対立が発端となって起こった。内戦の傷は今も、人びとの心に深く刻まれている。
「この国の誰もが紛争に慣れすぎてしまった」。終盤、トニーの弁護士がいみじくも述べるように、レバノン人もパレスチナ人も、紛争にかかわる話題になると感受性が鈍磨したかのような一面をみせることを、わたしは調査中しばしば感じてきた。そのたびにうんざりしつつ、同時に今どき日本ではお目にかかることのない懐深い情をみせられ、結局その情にほだされて長年かの地に通っている。正義など中東のどこにもないと、誰もが言う。しかし正義なき世界を救う情は、まだパンドラの箱の底に残っている。そんなことを感じさせてくれる傑作である。(菅瀬晶子)

 
 
映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 菅瀬晶子

映画がこの世に誕生して、120年あまり。最初は日常生活の一端を切り取ったものでした。いまや日本では年間に1300本に迫る数の映画が公開され、その内容も多種多様です。世界のさまざまな地域で、現在進行形で起きている問題を扱う作品も年々増えてきました。問題意識を喚起する手段として、映画は実に有効なのです。
みんぱくワールドシネマでは、所属する研究者の個別研究や現在進められている研究プロジェクトの内容に沿った映画を選び、その内容を研究者が解説することによって、最新の研究成果と映画のより深い理解を観客のみなさまと共有することを目的としています。紛争、差別、環境変動などを超えて、異なる価値観を持つ人びとはどう共存してゆくべきか。終映後、あらたな視座がみなさまの中に生まれれば、さいわいです。

 

申込方法

※ 定員に達しましたので、申込受付を終了しました。

・事前予約・定員制(先着順)での開催となります。
・受付期間 8月12日(水)9:00~9月10日(木)[定員になり次第受付終了]
・本人を含め2名まで
※解説時に手話通訳が必要な方は、8月21日(金)までにお申し込みいただき、その旨をお知らせください。

イベント予約サイトよりお申込み
メール・電話でのお申込み

メール・電話でのお申込みも受け付けます。次の必要事項をお知らせください。

 ① 件名に「9月12日ワールドシネマ」
 ② 参加人数
 ③ 氏名(漢字、フリガナ)
 ④ 電話番号
 ⑤ メールアドレス
 ⑥ 住所
 (③~⑥は参加者全員分)

【申込先】 千里文化財団イベント予約受付
 E-mail. yoyaku-event@minpaku.ac.jp
 Tel. 06-6877-8894( 9:00~16:00 土日祝を除く)

  • 定員に満たない場合は当日参加を受け付けますが、満席の場合はご入場できません。
  • 予約状況はイベント予約サイトでご確認ください。
  • 新型コロナウイルス感染症の予防のため、イベントを変更・中止する場合あります。
  • ご入館に際しては感染症対策にご協力ください。