みんぱくのオタカラ
- ワイン樽太鼓 2010年6月18日刊行
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寺田吉孝
この資料は、1999年に開催した特別展『越境する民族文化』の取材中にシアトルのタイコ(和太鼓)・グループから寄贈してもらったものだ。リーダーのスタン・シクマが、「僕たちがアメリカでタイコを叩いていることを日本でも紹介してほしい」と言っていたのを思い出す。
北米の日系3世たちがタイコに興味を持ち始めたのは1960年代末。日本の太鼓は高嶺の花だった。「買えないのなら作ってしまおう」と考えるところに彼らのパイオニア精神がよく表われている。ワイン樽を胴にして、屠殺場から仕入れた生皮の端をペンチなどではさみ、掛け声とともに皆で一斉に引っぱったそうだ。
見た目は粗削りかもしれないが、彼らの太鼓を打ちたいという気持ちがギュッと詰まっている。そういえば、胴の中央には「心」の一字。今回新しい音楽の常設展示場に出すことができ、スタンたちの心意気に少しは応えられたように感じている。
寺田吉孝(民族文化研究部教授)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0216489 / 標本名:太鼓◆関連ページ
新展示フォーラム「音の力―夏のみんぱくフォーラム2010」(2010年6月20日(日)~8月31日(火)開催)
新音楽展示
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