みんぱくのオタカラ
- 彝(イ)族の漆器 2006年2月17日刊行
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塚田誠之
中国南部に居住する少数民族、彝族のもとではふるくから漆器がつくられてきました。中でも四川省南部の涼山彝族自治州のそれがよく知られています。漆器製品として酒入れ、杯、飯椀、スープ鉢などさまざまな酒器・食器類が有名ですが、現在は、それらのほか、テーブルやイス、サイドボードといった家具や各種装飾品にいたるまで多様な種類の漆器がつくられています。
涼山州の州都西昌市や近郊の県で漆器製作工房を見学しましたが、製法は、かつてのような兼業農家の漆匠が自宅で足踏みの轆轤を使って材料の木地を回して製作する方式から、工場で電動器具を使って大量生産されるようになっています。また西昌市では土産物店で漆器が大量に販売されていました。
しかし、塗りの工程はひとつひとつ手作業で行われ、また顔料に赤・黒・黄の三色を用い、自然(太陽・月・星など)、植物(花、葉など)、動物(牛や鶏・魚の眼、虫など)などの人々の生活に身近な事物の文様を組み合わせた幾何学的文様を用いる点は今も変わっていません。
塚田誠之(先端人類科学研究部)
◆今月の「オタカラ」
標本番号:H230202、H230201 / 標本名:鷹爪杯
標本番号:HI10869 / 標本名:酒入れ
本館展示場(東アジア展示・中国地域の文化)
漆器に盛られたご馳走。スープ、彝族の代表的な料理であるブタ肉のぶつ切りをゆでたもの、主食のジャガイモ、ソバ餅が見える。
工房の様子。塗りは手作業。
鷹爪杯。鷹の爪を用いた酒杯。
酒入れ「モーイエ」。倒しても酒がこぼれない仕組みになっている。◆関連ページ
本館展示場(東アジア展示・中国地域の文化)
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