花(4) ─ 桜とプラントハンター ─
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花の季節が列島を離れようとしている。こう書けば、花は「桜」をさす。日本で、花が桜をさすようになったのは、いつのことだろう。「ただ花といひて桜のことにするは、古今集のころまでは聞こえぬ」と本居宣長が記しているから、平安中期以降のことらしい。以来、日本には、「花見」という、桜をめでて集団で酒を酌み交わす、世界にも類のない習慣が定着した。
一方、花見の習慣のないヨーロッパ、特にオランダやイギリスでは、17世紀のチューリップ(トルコ原産)への熱狂に端を発し、その後、ランを求めて南米へ、シャクナゲを求めてヒマラヤへと、プラントハンターたちがしのぎを削って赴いた。彼らが持ち帰った花は、窓辺や庭を飾る花として定着する。花のめで方には、その社会のあり方が投影されている。
国立民族学博物館 吉田憲司
一方、花見の習慣のないヨーロッパ、特にオランダやイギリスでは、17世紀のチューリップ(トルコ原産)への熱狂に端を発し、その後、ランを求めて南米へ、シャクナゲを求めてヒマラヤへと、プラントハンターたちがしのぎを削って赴いた。彼らが持ち帰った花は、窓辺や庭を飾る花として定着する。花のめで方には、その社会のあり方が投影されている。
国立民族学博物館 吉田憲司
毎日新聞夕刊(2007年4月25日)に掲載