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ずらりと並べる
- (2)つながるビーズ 2012年5月17日刊行
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南真木人(国立民族学博物館准教授)
ビーズの肩飾りをつけてみてくれたマガール人女性ネパール人女性のおしゃれに欠かせない装身具は、金製品とビーズの首飾りだ。カトマンズの中心に、ガラスのビーズ屋が34軒も密集する一画がある。イラキ・バザール。かつてこの辺りで、イラク人が干し果物を売っていたため、そう呼ばれる。バラビーズの糸通しから手がける店の主人は、みなムスリムの男性で、買うのは主にヒンドゥー教徒の女性たちになる。
取り扱うビーズの8割は、チェコのプレツィオーザ社から輸入した高級品で、残りは安価な中国製だ。以前はインドや日本の広島産のものも扱っていたという。だが、インド製は中国製に駆逐され、日本製は高価すぎて売れず、新規の仕入れを止めているそうだ。在庫があった日本製ビーズを見せてもらった。輝きがぜんぜん違うと、居あわせた女性も目を見張る。だが、彼女は1セット7000円の日本製をわき目に、その半値のチェコ製を選んだ。
世界的に見ても、ネパールはビーズの一大消費地だろう。ただし、ここで売れるビーズの大半は、赤いサリーに映える緑色か、吉祥の赤のどちらかだ。チェコ製ビーズがムスリム男性により細工され、ヒンドゥー女性の身を飾る。並ぶビーズに、つながる世界が垣間見える。
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