嗣(つ)ぐ・承(つ)ぐ・継ぐ・接ぐ(3) ─フルサト─
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ドイツにはトルコ系の人々が多く住んでいる。ことのはじまりは1960年代、外国から労働者を募集したことだった。その第一世代は、1990年ころ定年を迎え、トルコで老後の生活を送っている。かわってドイツに残った第二世代が働き手になり、子どもを育てているが、その子供もそろそろ青年期にさしかかる。
ドイツに生まれ育った第三世代の若者にとって、祖父母が老後を過ごすトルコは、夏のバカンスのイメージに刻印されている。太陽の光あふれる青い海と、信じられないくらい大きな果実が実るパラダイスは、日常の反対側にあって、色彩のないモノトーンのドイツと好対照をなす。
第三世代の若者のフルサトに対する視線は、一見するとドイツ人避暑客の視線に近づきつつあるようにも見える。だが、翻ってみれば、このフルサトは外国でゼロからスタートした移民が、財産や地位のかわりに子どもたちに継承してきたものである。フルサトが、実体としてよりもイメージとして構想され、それが家族の拠(よ)り所となる、それも現代という時代の姿なのかもしれない。
国立民族学博物館 森 明子
ドイツに生まれ育った第三世代の若者にとって、祖父母が老後を過ごすトルコは、夏のバカンスのイメージに刻印されている。太陽の光あふれる青い海と、信じられないくらい大きな果実が実るパラダイスは、日常の反対側にあって、色彩のないモノトーンのドイツと好対照をなす。
第三世代の若者のフルサトに対する視線は、一見するとドイツ人避暑客の視線に近づきつつあるようにも見える。だが、翻ってみれば、このフルサトは外国でゼロからスタートした移民が、財産や地位のかわりに子どもたちに継承してきたものである。フルサトが、実体としてよりもイメージとして構想され、それが家族の拠(よ)り所となる、それも現代という時代の姿なのかもしれない。
国立民族学博物館 森 明子
毎日新聞夕刊(2009年2月25日)に掲載