旅・いろいろ地球人
風を求めて
- (2)保留地から都市へ 2012年7月12日刊行
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伊藤敦規(国立民族学博物館助教)
ギャラリーへ向かうホピの夫婦=米アリゾナ州で、筆者撮影米国先住民の多くは、辺境の地や都市の辺縁部に位置する保留地内に暮らしている。私がしばしば訪れるホピ保留地も、アリゾナ州北東部の標高2000メートルほどの高地に位置する。雨のほとんど降らない岩と砂の広がる荒野である。
岐阜県ほどの土地に点在する13の村落のどれを見渡しても、映画館やショッピングモールといった大型商業施設はない。せいぜい小さな食料品店が1軒ある程度だ。近郊都市からは150キロほど離れているので、まさに陸の孤島といえよう。
とはいえ保留地での日常は、トウモロコシ畑の世話や、雨乞いのための儀礼とその準備、親族の集まりやそこで供する食事の用意などで、老若男女それぞれ忙しい。西洋的な娯楽に費やす時間は無いようにも思われる。
それでも彼らはしばしば都市に出る。日用品の買い出しや、アート作品の販売をするためだ。ホピの場合、成人男女の約8割が宝飾品や木彫や土器といった工芸品制作に携わっていて、それが主要な収入源となっている。
都市部のギャラリー訪問は、アーティストとしての技量を問われる交渉の旅といっても過言ではない。その道中には、現金収入という西洋的生活を潤わす追い風が吹くこともあり、売れ行きを芳しくなくさせる向かい風が吹くこともある。
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