国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2013年5月27日(月) ~5月28日(火)
《機関研究成果公開》国際シンポジウム「文化遺産はコミュニティをかたどるか? アフリカの事例から」

チラシダウンロード[PDF:2.1MB]
  • 日時:2013年5月27日(月)10:00~17:00/5月28日(火)10:30~17:30
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
  • 一般公開(参加無料/申込不要/定員70名[先着順])
  • お問い合わせ:〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
    Tel:06-6876-2151(代表)
    e-mail:mistyforest13★idc.minpaku.ac.jp
    ※★を@に置き換えて送信ください。
 

趣旨

グローバル化の進む現代において、ローカルなコミュニティは散り散りになったり、アイデンティティを強めたため偏狭なナショナリズムにつけ込まれやすくなったりしている。その結果、多くのケースにおいて、コミュニティ内部でのやりとりをとおして伝えられてきた記憶や文化が継承されにくくなっている。グローバル化の状況下において、記憶や文化をいかに継承していくかということは、いまや人類共通の課題といってよい。

この問題にとり組むために、本シンポジウムではひとつの仮説を検討する。それは、コミュニティという受け皿に記憶や文化が満たされるのではなく、逆に現代では、記憶や文化遺産を核としてコミュニティがたち現れる場合があるというものである。そのような「たち現れるコミュニティ」のバリエーションとしては、記憶や文化遺産をとおして既存の地縁集団や血縁集団が再定義される例も含まれよう。つまり、記憶や文化遺産の「積極的な継承」は、グローバル化の圧力のもとでコミュニティを再活性化させる有効な手段だと考えられる。

今回、とくにアフリカ地域を事例としてとりあげるのは、ローカルな価値基準にもとづいたコミュニティの動きが活発な地域だからである。ヨーロッパにもっとも近い他者であるアフリカの人びとは、19世紀から20世紀にかけて、植民地化という暗い過去を経験してきた。21世紀になってようやく、国境によって分断された民族集団の交流が再開し、略奪された文化遺産の返還要求が始まっている。こうした事例においても、無形の記憶や有形・無形の文化遺産は大きな役割をはたしている。アフリカの事例を議論の糸口として、文化遺産とコミュニティ、グローバル化をめぐる人類共通の課題を話しあいたい。

プログラム

5月27日(月)
10:00~10:10 館長挨拶 須藤健一(国立民族学博物館)
10:10~10:30 趣旨説明 飯田卓(国立民族学博物館)
セッション1 文化遺産の視覚表現
10:30~11:10 「セネガルにおける視覚的公民権――文化遺産についての同時代的な論議」
アレン・ロバーツ(カルフォルニア大学ロサンジェルス校)
11:10~11:50 「文化的アイデンティティの形成と再発見――エチオピアの事例から」
川瀬慈(国立民族学博物館)
11:50~12:10 コメントと討論
コメンテーター:野林厚志(国立民族学博物館)
12:10~14:20 昼休み/常設展(アフリカ展示)観覧
セッション2 祭祀がかたどるコミュニティ
14:20~15:00 「埋葬の共同体と王威の侵害」
ジョン・マック(イーストアングリア大学)
15:00~15:40 「祭の創造とコミュニティの再活性化――ザンビアにおいて展開中の文化運動」
吉田憲司(国立民族学博物館)
15:40~16:00 コメントと討論
コメンテーター:福岡正太(国立民族学博物館)
セッション3 文化遺産としての博物館資料
16:00~16:40 「コミュニティは多くの声で語る――博物館におけるアフリカ文化遺産の表象」
メアリージョ・アルノルディ(スミソニアン協会国立自然史博物館)
16:40~17:00 コメントと討論
コメンテーター:平井京之介(国立民族学博物館)
5月28日(火)
セッション4 世界遺産とコミュニティ
10:30~11:10 「世界遺産登録後におけるジェンネ・コミュニティの決定的変化」
ウスビ・サコ(京都精華大学)
11:10~11:50 「文化遺産と聖地、生活空間――東アフリカ、ケニア海岸部におけるミジケンダ・カヤの森の事例」
慶田勝彦(熊本大学)
11:50~12:10 コメントと討論
コメンテーター:関雄二(国立民族学博物館)
12:10~14:20 昼休み/特別展「マダガスカル 霧の森のくらし」観覧
セッション5 ユネスコ無形文化遺産と、コミュニティをかたどる遺産
14:20~15:00 「無形文化遺産と記憶、ローカル・コミュニティ――マダガスカルの事例」
シャンタル・ラディミラヒ(アンタナナリヴ大学)
15:00~15:40 「装飾からエスニック・シンボルへ――マダガスカルにおけるザフィマニリの浮き彫り意匠」
飯田卓(国立民族学博物館)
15:40~16:00 コメントと討論
コメンテーター:太田心平(国立民族学博物館)
16:00~17:30 総合討論
ディスカッサント 宮田繁幸(文化庁)、長谷川清(文教大学)、小谷竜介(東北歴史博物館)