国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2005年2月21日(月) ~2月24日(木)
研究ワークショップ 「伝統芸能の映像記録の可能性と課題」

  • 日時:2005年2月21日(月)~24日(木)
  • 場所 :国立民族学博物館 第4セミナー室
 

趣旨

現在、東南アジア各地において、大きな変化あるいは消滅の危機にさらされた伝統芸能を映像で記録しようという試みが行われている。しかし、多くの意義ある試みは、互いに関連付けられることなく行われているようにも見える。その結果、何をどのように撮影すべきなのか、撮影した映像をどのように保存管理し、活用していくべきなのかについては、必ずしも共通の方法論が確立されているわけではない。
一方、日本の各種団体は、東南アジアにおけるこうした試みに対して、経済的あるいは技術的な援助を行い、一定の役割を果たしてきたようである。確かに日本の企業等が開発した高性能の録音録画機器を援助することやそれを用いる技術を伝えることは、日本がなし得る貢献の1つだろう。しかし、今何よりも必要とされていることは、学術的な見地から伝統芸能の映像記録をしっかりと位置づけ、その実践に指針を与えることなのではないだろうか。
日本では、各地の民俗芸能を映像で記録しようと試みがすでに長く行われてきた。しかし、そうした資料が、必ずしもきちんと保存管理され、十分に活用されてきていないのも事実である。こうした日本における経験を、東南アジアの研究者とともに批判的に振り返り、望ましい映像記録のあり方を議論しながら探ることは、日本の研究者がなし得るもう1つの貢献であろう。
このワークショップは、以上のような考えに基づき、東南アジアと日本の研究者を招き、それぞれの伝統芸能の映像記録の経験を共有し議論を始めるきっかけとなることを意図して企画された。私は、このワークショップを最初のステップとして、継続的な議論の場をもつこと、映像記録作成の共同プロジェクトを企画実施し、実践の中から共通の指針を生み出していくこと、そして、東南アジアと日本における映像記録の試みを互いに関連付けていくことを目指したいと考えている。
なお、このワークショップは、日本学術振興会から国立民族学博物館に委託された人文社会科学振興プロジェクト研究事業の1つ「伝統と越境―とどまる力と越え行く流れのインタラクション―」の一環として開催するものであり、国立民族学博物館の研究フォーラムとして位置づけられている。

プログラム

2月21日 国立民族学博物館における映像製作
10:00~11:00 問題提起 福岡正太(国立民族学博物館)
11:00~12:00 民族学と民族誌映像 大森康宏(国立民族学博物館)
13:00~14:45 作品上映『関西のエイサー』 寺田吉孝(国立民族学博物館)
15:15~17:00 作品上映『三線をつくる―沖縄本島』 笹原亮二(国立民族学博物館)
2月22日 伝統芸能の保護と記録
10:00~11:00 「民俗芸能に注がれた眼差し~「郷土舞踊と民謡の会」と研究者たち」
 笹原亮二(国立民族学博物館)
11:00~12:00 「文化財保護の手段としての映像記録作成~日本の民俗芸能の場合」
 俵木悟(東京文化財研究所)
13:30~14:30 「英国における少数民族芸能の保護政策」 高松晃子(聖徳大学)
14:30~15:30 「アジア太平洋諸国の伝統芸能のデータバンク」
 大貫美佐子(ユネスコアジア文化センター)
16:00~17:00 討論
2月23日 伝統芸能の映像記録~東南アジアの経験
10:00~11:00 "Visual Documentation of Traditional Performing Arts in Thailand: A Case Study of SAC"
 Nantawat CHATUTHAI (Princess Maha Chakri Sirindhorn Anthropology Centre)
11:00~12:00 "Visual Documentation of Traditional Performing Arts in Cambodia"
 Sam~Ang SAM (Pannasastra University/ Royal University of Fine Arts)
13:30~14:30 "Visual Documentation of Traditional Performing Arts in Indonesia: The Case of Batak Musical Tradition"
 Rithaony HUTAJULU(North Sumatera University)
14:30~15:30 "Filming the Performing Arts in Malaysia: Aims, Approaches and Audiences "
 TAN Sooi Beng(Universiti Sains Malaysia)
16:00~17:00 討論
2月24日 共同の映像記録プロジェクト及びアーカイブズの諸問題
10:00~11:00 「日本におけるサウンド・アーカイヴの現状と課題~小泉文夫資料室の事例紹介」
 尾高暁子(東京藝術大学)
11:00~12:00
ベトナム表演芸術の音響・映像記録化における中心と周縁
(1)~RVMV(ベトナム少数民族無形文化遺産調査・映像記録化および人材養成プロジェクト)小史
「ベトナムと日本の提携による二つのプロジェクト、そして一つの心」
  山口修(大阪大学)
映写 ベトナムの元宮廷音楽諸伝統(故高橋光則作品)
RVMVプロジェクトの目的・方法・成果
  徳丸吉彦(放送大学)
RVMVにおける学術調査の方法と実践
  寺内直子(神戸大学)
13:30~14:20
ベトナム表演芸術の音響・映像記録化における中心と周縁
(2)~RVMVプロジェクトにおける音響・映像記録化
RVMVにおける録音活動の意義と実際
  芹澤秀近(大阪芸術大学)
RVMVにおける映像記録化の意義と実践
  藤岡幹嗣(映像制作者)
14:20~15:30
ベトナム表演芸術の音響・映像記録化における中心と周縁
(3)~RVMVプロジェクトの自己評価および未来への展望
学術調査担当者と音響・映像担当者の共同作業
  小塩さとみ(宮城教育大学)
  藤岡幹嗣 フィールドバックとデータベースへの道
  月溪恒子(大阪芸術大学)
  山口修
16:00~17:00 総合討論

問い合わせ先

国立民族学博物館 福岡正太研究室
mailto:fken★idc.minpaku.ac.jp(★を@に置き換えて送信ください)