国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2007年11月24日(土)
国立民族学博物館開館30周年記念フォーラム「文化資源という思想―21世紀の知、文化、社会」
国立民族学博物館開館30周年記念フォーラム

  • 日 時:2007年11月24日(土) 13:30~16:30
  • 場 所:国立民族学博物館 講堂
  • 主 催:国立民族学博物館、朝日新聞社
  • 後 援:文化資源学会
  • 入場無料: 定員450人 同時通訳つき(11月24日)
  • お申し込み等について:
    • 往復はがき か E-Mail で下記あてにお申し込み下さい(先着順)。
    • ただし、いずれも、郵便番号、住所、電話番号、お名前を明記のうえ「30周年記念フォーラム入場希望」とお書きください。
    • なお、参加申込を頂いた方の個人情報は本フォーラムのみで使用いたします。
  • お申し込み・お問い合わせ先:
     国立民族学博物館 情報企画課 情報企画係
     〒565-8511 吹田市千里万博公園10-1
     tel: 06-6876-2151
     e-mail : bunsifkmp24@idc.minpaku.ac.jp
 

趣旨

国立民族学博物館(民博)は今年、開館30周年を迎えました。これを機に、開館30周年記念事業の一環として、国際フォーラム「文化資源という思想―21世紀の知、文化、社会」を開催いたします。

近年、ユネスコの世界遺産条約に伴う動きを背景に、各地で文化遺産への関心が高まっています。いうまでもなく、博物館の資料や美術館の作品をはじめ、文化遺産、あるいは文化財といった概念は、保存、保護に主眼が置かれがちです。しかしながら、多くの分野でグローバル化が進む現在、文化遺産は、人々の生存の拠りどころとして、さまざまなかたちで利用されはじめています。文化遺産が、あらためて文化遺産として見直されつつあるといっていいでしょう。

また、周知のように、従来、学問領域が細分化される中で、文化を論じる際にも、歴史、文学、美術、音楽、芸能など個別の枠内にとどまることが多く、それらに対応する社会的な装置も、博物館、文書館、文学館、美術館、劇場と細分化され、それぞれ文化資料を別個に収集、保存、展示してきました。その結果、本来総合的なものであるはずのある時代や地域の歴史、文化、社会、自然が、断片的に理解されるという弊害も明らかになってきています。そんな中、文化資源という考え方は、文化をもう一度総合的な文脈で捉えなおすための手がかりになるものと期待されます。

これらの流れを踏まえて、民博では、2004年に文化資源研究センターを立ち上げました。今回のフォーラムでは、文化資源の可能性と課題を検討し、21世紀の知と文化と社会のありかたについて展望いたします。

プログラム

11月24日(土)民博 講堂
13:00 開場
13:30~13:35 ごあいさつ 松園万亀雄(国立民族学博物館長)
13:35~13:45 趣旨説明 吉田憲司(国立民族学博物館 文化資源研究センター長)
13:45~15:05 クリス・イクェメジ(ナイジェリア大学 上級講師)
  「アフリカにおける文化資源―定義と価値、運用を考え直す」
ニコラス・トーマス(ケンブリッジ大学 考古人類学博物館長)
  「さまざまな交換、コレクション、そして歴史」
木下直之(東京大学大学院 教授)
  「文化資源と時間~神田祭復元プロジェクトをめぐって」
関雄二(国立民族学博物館 教授)
  「文化遺産との共生-南米ペルーの博物館建設と住民参加プロジェクト」
15:05~15:15 休憩
15:15~16:30 総合討論 司会 川口幸也(国立民族学博物館 准教授)

関連イベント(予定)

■ 東京 2007年11月25日(日) 13:00~18:00 会場:東京大学 法文2号館1番大教室

セッション1「身振り、身体、近代化」

13:00~13:15 趣旨説明 木下直之
13:15~13:40 報告 月村辰雄(東京大学)
13:40~14:05 報告 笹原亮二(国立民族学博物館)
14:05~14:35 コメント・討論 古井戸秀夫(東京大学)
15:15~16:30 休憩

セッション2「祭礼、伝統、復元、国家」

14:50~15:15 報告 福原敏男(日本女子大学)
15:15~15:40 報告 豊田由貴夫(立教大学)
15:40~16:10 コメント・討論 田村克己(国立民族学博物館)
16:10~16:30 休憩

セッション3「復元・神田祭の音楽」

16:30~17:15 実演
17:15~17:30 コメント 常磐津文字兵衛

→ 東京大学大学院人文社会系研究科 文化資源学研究室 詳細ページへ

■ パリ 2007年12月20日(木) 14:00~17:45 会場:パリ日本文化会館小ホール

「文化資源の蓄積と表象」 吉田憲司(国立民族学博物館)
久留島浩(国立歴史民俗博物館)
Michael Lucken(INALCO)
福岡正太(国立民族学博物館)
渡辺裕(東京大学)
Nicole Rousmaniere (Sainsbury Inst. 東京大学客員教授)
木下直之(東京大学)
関直子(東京都現代美術館)
川口幸也(国立民族学博物館)

■ パリ 2007年12月21日(金) 14:00~18:00 会場:パリ日本文化会館大ホール

「文化財・文化遺産 ・ 文化資源」
第1セッション「文化財から文化遺産へ―日本からの視点」
高野光平(茨城大学)
渡辺裕(東京大学)
Nicolas Fieve(EPHE)
木下直之(東京大学)

第2セッション「文化遺産、それとも文化資源?」
Yves Le Fur(Quai Branly 美術館)
竹沢尚一郎(国立民族学博物館)
佐々木利和(国立民族学博物館)
吉田憲司(国立民族学博物館)

成果報告

従来の文化財や文化遺産がどちらかといえば保護保存を重視しているのに対し、文化遺産は新しい価値や忘れられた価値の発見とその活用に軸足を置いており、何らかのモノや事象を呼ぶための名称というよりは、そうしたアプローチの姿勢そのものを指す、ということで大まかな合意が得られた。

このような、文化資源とはなにかという問題に正面から取り組み、まとまった議論をすることは、民博で2004年に文化資源研究センターを立ち上げて以来、ずっと懸案であり続けたが、今回ようやく実現した。

また、周知のように、東京大学でも2000年以来、大学院に文化資源学科が設置されているが、今回、東大側との協力の下にフォーラムを行なったことで、ともに文化資源を掲げる両者の共通点と違いも確認することができた。つまり、東大側はどちらかといえば新しい価値や忘れられた価値の発見に軸足を置いているのに対し、博物館の機能をあわせ持つ民博では、それらをいかに活用していくか、ということに主眼を置こうとしていることが明確になった。

内外の、専門を異にする多くの研究者が参加したが、これにより、文化資源というアプローチの対象と方法が持つ多様性を確認することができ、また、参加者をはじめとする関係者の間でも理解を得ることができた。

いずれにせよ、西洋を中心とする近代史という時空間において、文化や歴史を語るために使われてきた、西洋起源の、しばしば普遍性を志向する言葉や方法に対して、今日、各地でローカルな文脈から違和感が表明されており、新しい別の言葉やアプローチを模索する動きが当の西洋をも含む世界じゅうで始まっているのだということが確認された。

当日の様子

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会場
松園万亀雄館長
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吉田憲司教授
クリス・イクェメジ氏
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ニコラス・トーマス氏
木下直之氏
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関雄二教授
総合討論