国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

受験生へのメッセージ

受験生へのメッセージ

私たちの2専攻は、フィールドワークを通して考え、研究することを重視しています。グローバル化が進行する現代社会では、文化の移動や混交が日常的になり、人々の帰属意識や繋がりも多様になっています。ヒト、モノ、情報の迅速で多方向的な移動は、既存の枠組みにとらわれない共生・共存の可能性を開く一方で、これまで存在しなかった衝突や摩擦を引き起こす原因ともなっています。このように大きく変化する世界を、人類学的な視点をフルに活用して現場から捉えることのできる人材を養成します。

両専攻には、文化人類学とその関連の学問領域で、世界各地のフィールドの第一線で活躍するスペシャリストが揃っています。エスニシティ、歴史、生態環境、家族、生殖医療、エイジング、宗教、政治と社会、開発、観光、ジェンダー、音楽と芸能、物語、言語、情報学、博物館学、保存科学、考古学、物質文化、アート、染織、技術、文化遺産など幅広い分野の研究に従事する教員を40名あまり擁する教育体制は、他に類を見ません。基盤機関である国立民族学博物館は、日本における民族学・文化人類学の拠点機関であり、そこに収蔵される膨大な研究資料を活用した研究が可能です。

フィールドワークや学会での発表を支援する各種の学生派遣制度など、学生の研究や生活を支援する制度が充実しているのも私たちの大学院の特色のひとつです。そのほか、学外の財団などの研究助成や奨学金制度への応募を支援する体制も整っており、日本学術振興会の特別研究員(DC)への新規採択者は、平成17年度から28年度までの12年間で合計27名を数えます(年平均2名あまりで、在籍者の3分の1が採択されています)。平成28年度までに両専攻の博士学位取得者は98名を数え、大学などの教育研究機関を中心にさまざまな分野で活躍しています。

総研大の地域文化学専攻・比較文化学専攻で、自らの研究テーマと可能性を追求しようという皆さんを歓迎します。

総合研究大学院大学文化科学研究科 地域文化学専攻
                 比較文化学専攻

在校生

孫文 比較文化学専攻(平成30年度入学)

2008年5 月12日、四川省アバ・チベット族チャン族自治州でM 8 . 0 の大地震(「5 ・12四川大地震」)が発生しました。同年、私は中国の中央民族大学に入学し、震災復旧について研究をはじめました。修士課程では、四川大地震の被災地を訪問し、日常生業の変化と資源問題について調べました。調査結果を整理するために参考にしたのは、日本の資源人類学研究と生業研究でした。これがきっかけとなり日本の人類学に関心をもちました。特に、日常の些細なことに対する研究姿勢が興味深いと思います。
災害、生業、開発が博士課程を選ぶためのキーワードでした。総研大(みんぱく)には、異なる研究分野の人類学者が大勢集まっています。多様な研究視座と国際的な視野に憧れて、私は総研大に進学すると決心しました。現在の研究テーマは、2008年の地震で被災した四川省の黒水チベット族の開発状況とアイデンティティの選択策略で、さまざまな立場の人々の日常的実践に着目しています。
自分の研究を遂行するために、総研大本部やみんぱくの支援制度が役立ちます。私は予備調査のために「学生派遣事業」を利用しました。また学外の助成金に関する情報も豊富です。そのおかげで2020年度日本学術振興会の特別研究員(DC 2 )に選ばれました。申請の際、指導教員と研究協力係が丁寧に支援してくださったことは、今後一生の財産だと思います。
人類学の研究者として、国立民族学博物館の収蔵資料も魅力です。自分の研究だけでなく、世界の文化を比較するために重要なヒントが得られます。総研大(みんぱく)で学びながら、研究室の仲間と先生方から、通文化的研究と学際的研究のドアを開いていただきました。

松永千紗 地域文化学専攻(平成30年度入学)

私は、アメリカ合衆国に現存する日本町のひとつである「サンノゼ日本町」を、コミュニティの視点から研究しています。修士課程では、この日本町にあるサンノゼ日系アメリカ人博物館を対象に、解説員による語りの継承について研究していました。博士課程では、この博物館が日本町で果たす役割への興味から始まり、コミュニティへと研究対象が発展していきました。
地域文化学専攻は、国立民族学博物館(みんぱく)を基盤機関としています。博物館の形として最先端である「フォーラム型情報ミュージアム」プロジェクトの試みを間近で見られるなど、博物館研究に最適の場所です。さらに、みんぱくは、博物館研究だけでなく、人類学や民族学、考古学などの分野を専攻する学生にとって、非常に理想的な環境だといえます。館内には、世界最大級の所蔵品や人類学・民族学に関する膨大かつ多様な資料があり、これらを用いた研究が可能です。また、みんぱくには学生数を遥かに超える様々な専門分野の先生方が所属されており、希望すれば、それぞれの専門分野の視点から、的確なコメントを頂くことができます。加えて、館内で開かれる様々な共同研究や講演、プロジェクトに参加する機会にも多く恵まれます。また、専攻では、当該分野に必須であるフィールドワークに対する経済的な支援も充実しています。
私は、このような恵まれた研究環境をできる限り活用しながら、日々研究に邁進しています。多様な分野の先生方との対話、共同研究への参加、充実した資料の活用、さらにフィールドワークの支援など、地域文化学専攻には、良い研究成果を残すことができるすべての環境が整っているといえるでしょう。

荘司一歩 比較文化学専攻(平成26年度入学)

私が、総研大で専門としているのは、日本から遠く離れた南アメリカ大陸の考古学である。幼少の頃から、歴史などの科目が好きで、いつか自分の知らない地球の裏側の世界を見てみたいと思っていた私は、大学で考古学を学んでいた。そこでは、過去の出来事を物質文化から立証する方法を学んでいたが、一方で、過去や現在、あるいは世界中の社会や文化を同じ土俵で捉え、人間について総合的に考察する、文化人類学にも興味を持つようになっていった。そこで、文化人類学的な視座から考古学を研究するために、この総研大に進学することにした。

この大学に進学することが、私にとって魅力的であったことの大きな理由は、基盤機関である国立民族学博物館(以下、民博)に、様々な分野で活躍する第一線の研究者が多く集まっている点である。民博は、研究成果を発信する社会還元の場であると同時に、最先端の研究が繰り広げられる場でもある。たとえば、日本中、あるいは世界中から研究者が集まるような、研究会や講演会が毎月数多く開催されており、我々学生も参加し議論を交わすことが日常的に行われている。考古学に限らず、様々な視点を持った研究者がいるということは、自分の視野や知見を広げるうえで、このうえない研究環境であることを意味する。

また、学生の研究活動を補助するような、助成事業が多く存在することも、魅力の一つである。民博には、世界中で調査活動をする学生が多く在籍しているが、その調査や研究発表のための旅費などを補助する制度が多く存在する。また、共用の調査機材なども充実しており、学生に貸し出しが行われているなど、研究活動を実現するための環境として恵まれている。

呂怡屏(ロ イーピン) 地域文化学専攻(平成26年度入学)

私は2014年4月に私費留学生として来日した。修士課程の時、在学していた国立台北芸術大学(台湾)が国立民族学博物館(以下、民博)と学術協定を結び、博物館学ワークショップをおこなった。この際、民博の博物館としての魅力と、民博の研究者による文化人類学のアプローチからの多様な博物館研究が強く印象に残った。それで、私は博士課程では博物館学から文化人類学の世界に移り、民博に置かれている総研大の大学院に進学することにした。

総研大では人類学に関するさまざまなテーマの授業がおこなわれており、興味のある専門分野の知識を深く掘り下げることができる。また、民博に収蔵された世界各地の貴重な標本資料、図書資料、学術データベースなどを自らの研究に自由に利用することができる。

民博はたんなる博物館ではなく、大学共同利用機関である。それゆえ共同研究会や国際シンポジウムなどが数多く開催されている。これらに参加することを通じて、学生は多様な研究課題や最新の研究動向に触れることができるし、自らの研究の視野を広げることもできる。

また、人類学的研究ではフィールド調査が必要となるが、総研大は学生の調査への支援制度が充実している。短期フィールド調査や海外での研究成果発表のための旅費にたいする補助がある。さらに調査で使用するさまざまな機材の貸し出しもある。

私はいま総研大で学びながら、自分のやりたい研究を遂行するうえでとても恵まれた環境にいると感じている。

 

★文化科学研究科他専攻及び他研究科の「卒業生の就職先・受験生へのメッセージ」をご覧になりたい方はこちら