国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

民族音楽(3) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年8月8日刊行
寺田吉孝(国立民族学博物館教授)
世界で人気 インドのおどり

イギリス・ロンドンでインドの伝統楽器を習う少女たち

インド南部で生まれた「バラタナーティヤム」というおどりは、元々はヒンドゥー教の神さまにささげるために寺院でおどられていたのですが、1930年代にステージで演じるおどりに生まれ変わりました。公演では、顔や手のこまやかな動きでさまざまな感情を表現するスタイルと、複雑なリズムを足の動きなどで表すスタイルを組み合わせて演じます。

バラタナーティヤムは、インド国内だけでなく、世界各地で人気がありますが、最も熱心にこのおどりを学んでいるのは、インドやスリランカからアメリカやヨーロッパに移住した人たちです。一人前のおどり手になるには、小さい頃から練習をしなければならず、小学校の1,2年生で始めることが多いようです。両親は、レッスンの送りむかえなどがあり大変ですが、子どもたちにインドの文化を教えたいと願っているため協力をおしみません。

10年くらい練習を続けておどりの基礎をすべて学んでしまうと、大きな発表会を開きます。卒業公演のようなもので、親戚や友人たちを招いて盛大に行います。時には、インドから有名なおどり手がゲストで招かれることもあります。このような子どもたちの中には才能のあるおどり手もおり、バラタナーティヤムが生まれたインドでおどりたい、もっとうまくなりたいと願う人が増えています。インドへ留学したり、プロとして活躍する人も出てきました。


プロの舞踏家によるバラタナーティヤム

国外で学ぶ若者も

インドの人たちは、はじめ、国外で学んだおどり手を相手にしていませんでしたが、優れたおどり手が出てきたので、徐々にかれらの存在を認めるようになりました。今ではカナダやイギリスなどでおどりを学んだ若者が、インドの舞踊祭に数多く参加しています。


おどりのリハーサル=カナダ・トロントで
 

一口メモ

バラタナーティヤムというのは「インドのおどり」という意味です。イギリスの植民地だったインドは、イギリスから独立するために、イギリス文化に負けないインドの文化を作ろうとし、その中で生まれたのがこのおどりです。

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