国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究スタッフ便り 蘭語学ことはじめ

研究スタッフ便り『蘭語学ことはじめ』

12月(1)  「空路」ライデンへ
2006年12月1日、ライデン大学国際アジア研究センター(IIAS)に一年間客員研究員として着任するため、晴れて関西空港を発ちました。といっても実はライデンというところへ行くのは今回が初めて。とにかくアムステルダム・スキポール空港 (Schipole Airport―オランダ語のschは /sk/ と読むのね?) まで行って、そこで電車に乗り換えれば着くはずだから、大丈夫。
禁煙
関西空港からはドイツ経由でアムステルダムへ。ドイツ語圏を経てのオランダ語圏入りとなった。いかに私がヨーロッパの言語事情にうといといっても、ドイツ語もオランダ語も英語と同じくゲルマン系の言語である、というところまでは一応、知っている。(一応、ね。)
さて、12時間のルフトハンザ便での地下室密集型のお手洗いという初めての経験 (そもそも飛行機に地下室なんてあったっけ?) の興奮をふきとばしたのは、禁煙マークの側にあった次の標示であった。(二語目に注目。)

Nicht Rauchen! (ドイツ語)
Niet Roken! (オランダ語)

もしかして、ドイツ語の ch (発音は /x/) はオランダ語では k (発音は /k/), ドイツ語の au はオランダ語では o ? まるで言語学の教科書に描かれたような美しい音対応! その後、ch と kが対応する次のような単語がつぎつぎと目に入ることになりました。

ドイツ語 ich Zucker Milch sprechen welche Rechnung
オランダ語 ik suiker melk spreken welk(e) rekening
英語(参考) I sugar milk speak which (bill)
(意味) 砂糖 牛乳 話す どの 請求書

ちなみに、 /x/ と /k/ の対応も、/o/ と/au/ も、私が修士課程ではじめて調査したフィジー語カンダブ方言と標準フィジー語の間でも規則的にみられる音対応(下表参照)。というわけで、はじめて訪れるライデン、意味もなくなつかしい気持ちで到着したのでした。

フィジー語カンダブ方言 ixo suxa xana
標準フィジー語 iko suka kana
(意味) あなた 砂糖 食べる
 (参考) 国際アジア研究センターウェブサイト http://www.iias.nl/


ふるさとの大壷なつかし・・・民博のパティオが恋しくなったらスキポール空港へ? 地下密集型洗面所群・・・機体中ほどにある階段(左)を下りて行くと、お手洗いが五つある(右)。こんなのはじめて。
禁煙!ドイツ語 ライデンにも「みんぱく」が!?現地語表記 Rijksmuseum voor Volkenkunde の下に小さく 'National Museum of Ethnology'。