研究スタッフ便り 蘭語学ことはじめ
2月(1) 言語学オリンピック
オランダ滞在も三ヶ月目を迎えようとするある日、ライデン大学言語学センターのウェブサイトをのんびりながめていたら次の一行が目に入った。
2月の行事予定・10日土曜日 「Taalkunde Olympiade」
taalは「言語」、kunde はたしか「~学」だから、taalkunde は「言語学」のはず。Olympiade はもちろん、「オリンピック」。しかも、ほかの部分はすべて英語なのに、これに関するインフォメーションだけはすべてオランダ語で書いてある。これってもしかして・・・!?
2月の行事予定・10日土曜日 「Taalkunde Olympiade」
taalは「言語」、kunde はたしか「~学」だから、taalkunde は「言語学」のはず。Olympiade はもちろん、「オリンピック」。しかも、ほかの部分はすべて英語なのに、これに関するインフォメーションだけはすべてオランダ語で書いてある。これってもしかして・・・!?
「国際科学オリンピック」の新競技
高校生を対象とした「国際科学オリンピック」にはいくつかの競技があって、毎年もしくは数年に一度開催されている。日本では「物理チャレンジ2007」や「日本数学オリンピック」、「全国高校化学グランプリ」などが開催されているので、耳にされたことのある方も多いのではないだろうか。言語学オリンピックは一番新しい競技で2003年にはじまったのだとか。知らなかった。(知っていても年齢をごまかして参加するにはちょっと無理があったけど。)
タイトルに「言語学」とあると難しく聞こえるけれど、別に、言語や言語学の知識を競うわけではない。現実に存在する(もしくは存在した)言語や文字体系にみられる現象を素材としたパズル、と考えていただくのが一番正確だろう。したがって、言葉については何も知らなくてもよいが、論理的な分析能力は必要だ。参加者にも文科系よりも数学や物理専攻希望の高校生が多いようだった。また、現在は医学部の一年生だけれど「高校生のときに毎年参加して面白かったから」今年も参加しにきた、という人もいた。オランダ大会では、付き添いの先生方や一般の人も高校生と一緒に競技に参加できる。もちろん正規の参加者にはならないから成績の順位表には載らないが、回答した内容はちゃんと採点してもらえる。
さて、ここでは言語を素材としたパズルとはいったいどんなものだか広く一般の方に見ていただけるように、覚えたてのオランダ語をつかって模擬問題・ダイジェスト版を作ってみました。これでウォーミングアップして、ぜひ過去に出題された問題を関連ウェブサイトからダウンロードして挑戦してみてくださいね。
問題1 以下はオランダ語の数字の読み方です。
問い: オランダ語で27, 41, 88はそれぞれなんというでしょう。
問題2 以下はオランダ語の文です。
問い: オランダ語で「彼はお天気のいいときにはビールを飲む。」はなんというでしょう。
ちなみに、これまでに記述されていない言語について分析するとき、言語学者はここでみられるような分析を積み重ねて文法書などを執筆します。もっとも、現実の言語はそのまま分析できる形では存在しませんから、まず、データをじょうずに集めるところで腕が問われるし、複雑で不規則な要素もたくさんあるのでこれほど簡単に解けるものではありませんが。
もし私が高校生のときに「言語学オリンピック」があったら。もしかしたら優勝してヨーロッパでの国際大会に行くチャンスがもらえたかもしれない? うーん残念。でももしかしたら「おもしろいけど、もう充分」などといって、大学では全然別の専門を選んでいたかもしれない? そんな風に考えていると、科学オリンピックの一番大きな意義は、それぞれの科学分野の普及でも基礎学力トレーニングでもなく、高校生に将来への広い選択肢を与えることにあるのかな、と思えてきたりもするのでした。
問題の答え
問題1 27 zevenentwintig、41 eenenveertig、88 achtentachtig
問題2 Hij drinkt een biertje als het mooi is.
関連ウェブサイト
第四回(2006年)国際言語学オリンピックウェブサイト[英語]
http://www.olympiaadid.ut.ee/ilo4/
オランダ言語学オリンピックウェブサイト[オランダ語のみ]
http://www.olympiade.leidenuniv.nl/
北米(カナダ・アメリカ合衆国・メキシコ)言語学オリンピック [英語]
http://www.namclo.org
『月刊言語』2000年10月号掲載の「言語学オリンピック」に関する記事
http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/intling/olympic
ライデン大学言語学センター [英語]
http://www.ulcl.leidenuniv.nl/
※注
言語学オリンピックについては、2007年12月発行予定の『民博通信』の紀行欄にも報告を執筆予定。
タイトルに「言語学」とあると難しく聞こえるけれど、別に、言語や言語学の知識を競うわけではない。現実に存在する(もしくは存在した)言語や文字体系にみられる現象を素材としたパズル、と考えていただくのが一番正確だろう。したがって、言葉については何も知らなくてもよいが、論理的な分析能力は必要だ。参加者にも文科系よりも数学や物理専攻希望の高校生が多いようだった。また、現在は医学部の一年生だけれど「高校生のときに毎年参加して面白かったから」今年も参加しにきた、という人もいた。オランダ大会では、付き添いの先生方や一般の人も高校生と一緒に競技に参加できる。もちろん正規の参加者にはならないから成績の順位表には載らないが、回答した内容はちゃんと採点してもらえる。
さて、ここでは言語を素材としたパズルとはいったいどんなものだか広く一般の方に見ていただけるように、覚えたてのオランダ語をつかって模擬問題・ダイジェスト版を作ってみました。これでウォーミングアップして、ぜひ過去に出題された問題を関連ウェブサイトからダウンロードして挑戦してみてくださいね。
問題1 以下はオランダ語の数字の読み方です。
1 | een |
7 | zeven |
8 | acht |
21 | eenentwintig |
48 | achtenveertig |
86 | zesentachtig |
問い: オランダ語で27, 41, 88はそれぞれなんというでしょう。
問題2 以下はオランダ語の文です。
1. Hij drinkt een biertje. | 「彼はビールを(一杯)飲む。」 |
2. Hij eet een appel. | 「彼はりんごを(ひとつ)食べる。」 |
3. Hij is ziek. | 「彼は病気だ。」 |
4. Het is mooi. | 「いいお天気だ。」 |
5. Hij eet een appel als hij ziek is. | 「彼は病気のときにはりんごを食べる。」 |
6. Hij gaat naar een café als hij een biertje drinkt. | 「彼はビールを飲むときにはカフェ・バーへ行く。」 |
問い: オランダ語で「彼はお天気のいいときにはビールを飲む。」はなんというでしょう。
ちなみに、これまでに記述されていない言語について分析するとき、言語学者はここでみられるような分析を積み重ねて文法書などを執筆します。もっとも、現実の言語はそのまま分析できる形では存在しませんから、まず、データをじょうずに集めるところで腕が問われるし、複雑で不規則な要素もたくさんあるのでこれほど簡単に解けるものではありませんが。
もし私が高校生のときに「言語学オリンピック」があったら。もしかしたら優勝してヨーロッパでの国際大会に行くチャンスがもらえたかもしれない? うーん残念。でももしかしたら「おもしろいけど、もう充分」などといって、大学では全然別の専門を選んでいたかもしれない? そんな風に考えていると、科学オリンピックの一番大きな意義は、それぞれの科学分野の普及でも基礎学力トレーニングでもなく、高校生に将来への広い選択肢を与えることにあるのかな、と思えてきたりもするのでした。
問題の答え
問題1 27 zevenentwintig、41 eenenveertig、88 achtentachtig
問題2 Hij drinkt een biertje als het mooi is.
関連ウェブサイト
第四回(2006年)国際言語学オリンピックウェブサイト[英語]
http://www.olympiaadid.ut.ee/ilo4/
オランダ言語学オリンピックウェブサイト[オランダ語のみ]
http://www.olympiade.leidenuniv.nl/
北米(カナダ・アメリカ合衆国・メキシコ)言語学オリンピック [英語]
http://www.namclo.org
『月刊言語』2000年10月号掲載の「言語学オリンピック」に関する記事
http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/intling/olympic
ライデン大学言語学センター [英語]
http://www.ulcl.leidenuniv.nl/
※注
言語学オリンピックについては、2007年12月発行予定の『民博通信』の紀行欄にも報告を執筆予定。
回答風景 | マヤ文字の問題 |
休み時間に |