もてなしのかたち(1) ─ やさしさ ─
|
アフリカ・ザンビア共和国のチェワの人々の村に通い始めて20年以上になるが、村の女性のもてなしぶりにはいつも頭がさがる。朝の洗面や水浴び用の水は、つねに適度に温めてさし出される。家の内部と周囲は、朝のうちにチリひとつなく清掃される。
母系を通じて地位や財産が継承されるこの社会では、女性が大きな発言権をもつ一方、結婚後の女性は夫や男性の客人につくすべきことが強調される。この地域一帯は、かんばつや隣国の内戦の影響など、多くの困難にさらされてきた。そうした状況の中でも、人々のもてなしぶりは変わらない。どうしてこれほどまで人にやさしくなれるのだろうか。社会の制度や慣習では説明できないものがそこにはある。私がチェワの人々にひきつけられる理由の一つである。
国立民族学博物館 吉田憲司
母系を通じて地位や財産が継承されるこの社会では、女性が大きな発言権をもつ一方、結婚後の女性は夫や男性の客人につくすべきことが強調される。この地域一帯は、かんばつや隣国の内戦の影響など、多くの困難にさらされてきた。そうした状況の中でも、人々のもてなしぶりは変わらない。どうしてこれほどまで人にやさしくなれるのだろうか。社会の制度や慣習では説明できないものがそこにはある。私がチェワの人々にひきつけられる理由の一つである。
国立民族学博物館 吉田憲司
毎日新聞夕刊(2006年12月6日)に掲載