旅・いろいろ地球人
暖をとる
- (7)暖炉にこだわる人々 2010年1月27日刊行
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宇田川妙子(民族社会研究部准教授)
家族写真が飾られている暖炉イタリアの田舎で、お宅を訪問すると「これ、私が作ったんだ」と、暖炉を自慢されることがよくある。
イタリアでは自分で家を建てることは珍しくないが、暖炉の作り方は少し難しいという。火の持ちがよく煙の通りがよいように、空気の流れを調節するには工夫がいるからだ。確かに今は電気などを用いた近代的な暖房器具がどこでも完備されている。しかし、それでも薪(まき)を用いる暖炉を好む人は少なくない。
その理由は、暖炉の場合、消した後も熾火(おきび)が残っているため家中の暖かさが長続きすることにあるという。ちらちら揺れる炎が、寂しい冬の夜長には、もってこいの同伴者になるという人もいた。
暖炉の火は調理にも使われる。特に日曜祝日に家族や親戚(しんせき)が集まってきて、暖炉で自家製のソーセージやブルスケッタ(イタリア版トースト)などを焼いて食べながら皆で話に興ずるのは、冬の楽しみの一つだ。
その意味で暖炉は、家族のまとまりの象徴でもある。実際、どの家でも暖炉の周囲には、家族の写真が置かれている。彼らが暖炉に感ずる暖かみとは、こうした人の繋(つな)がりにこそあるのかもしれない。シリーズの他のコラムを読む
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