旅・いろいろ地球人
宗教とアルコール
- (7)酒癖はDNA? 2010年3月17日刊行
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庄司博史(民族社会研究部教授)
仲間とたのしく飲む文化もうまれているEU諸国では各国の国民をおもしろおかしく比較する絵はがきをよく目にする。そこに登場するフィンランド人はきまって同じだ。バーでむっつりグラスを握る男か、瓶を片手に酩酊(めいてい)する男である。
社交べたで酒癖のわるさ。これは、福祉や教育制度を誇るフィンランド人が恥じる唯一の弱点なのだ。だまって飲んでいた男が突如あばれだし、今度は手がつけられない、なんて。
EUに加盟して15年。ビールやワインをエレガントに飲む「ヨーロッパ人らしい飲み方」は、政府や教会あげてのキャンペーンだが、あまり効果がない。世界一消費量が多いわけではないし、信心深い人は酒に触りもしない。
問題は1割の国民が全国消費量の半分以上を飲んでしまうことだ。ほとんどの場合、週に1度、月に数回だが飲みだすと止まらない。酒で失敗した政治家の数も、日本に劣らない。
原因探しも盛んだ。飲酒を罪悪視する教会への反発なのか、飲むなら酔わないと損というケチ根性なのか、酒依存型の文化なのか。
ついにはDNA説も巻き込み真面目(まじめ)な論争は今も続く。シリーズの他のコラムを読む
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