メキシコの首都メキシコ市でには、毎年秋に特別なイベントが開かれる。アレブリへと呼ばれる巨大な紙人形のパレードだ。民衆芸術美術館が主催し、昨年は10月23日に行われた。個人や企業、団体の有志が制作したカラフルで摩訶(まか)不思議なアレブリヘ164体が、メキシコ市の目抜き通りを行進した。
このパレードは昨年で4回目、まだまだ新しい「年中行事」だ。同館館長のワルテル・ボエルスターリ氏は、政治や宗教とは無関係の市民中心の祭りと力説する。だれでも参加できるように、同館ではアレブリへ教室を開催し、その制作方法を伝授している。
アレブリヘとは、ファンタスティック(空想的)な生き物のことである。画家ホセ・アントニオ・ゴメス・ロサスの絵画がもとになり、紙人形作家ペドロ・リナレスが命名したといわれる。現実には存在しない形や色の動物や人物像が好んで作られる。
メキシコは昨年、独立戦争開始200周年を迎えた。パレードではメキシコ史の英雄をパロディー化したアレブリヘも見られた。メキシコ人民衆の創造力と歴史認識を同時に楽しめるこの日は、私たち外国人にとっても特別な日といえよう。
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