国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

オセアニア探検

(4)帆にも服にもなる葉  2011年8月4日刊行
ピーター・J・マシウス(民族社会研究部准教授)

カヌーの帆と婚礼衣装
オセアニアには、植物の種類と部位に応じて、加工する3種類の方法がある。葉を使った編み物、樹皮をたたいた樹皮布、繊維を織った織物である。今回は編み物について紹介したい。

発達したカヌーと航海術をもった人々がオセアニアで暮らすようになって3000年以上たつが、彼らは、パンダナスの葉からさまざまな生活用品を作ってきた。長いパンダナスの葉を洗い柔らかくし、かわかしてから細く裂く。これを編んで敷物や衣服、カヌーの帆などが作られる。

民博のオセアニア展示場中央にある航海用カヌー、チェチェメニ号には、まさにこのパンダナス製の帆がはられている。帆を見上げると、帆はココナツのロープでつなげられ、風をうまく捉えるようになっているのがわかる。

このカヌーの近くには現代トンガの結婚衣装が展示され、新郎が西洋風の衣装の上にパンダナスの葉を編んだ正装用スカートを誇らしげにまとっている。

私の生まれたニュージーランドの大学の卒業式では、今でも、同様の正装をした太平洋の島々の学生たちを見ることができる。オセアニアの大海を渡った彼らの祖先が工夫した技術は、今日でも生き続けている。
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